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「花音(かのん)ちゃんっていうの?かわいい名前だね」
「名前だけじゃないだろ」
「ほら、飲んで飲んで」
……ああもう、そんな声は聞きたくないの。
私が聞きたいのは、あの人の声だけ。
低くて、静かで、優しくて。
大好きな、崇さんの声。
だけど、この場に来ることを選んだのは私。
勢いだけで「合コンに行ってやる!」なんて……言うんじゃなかった。
***
ケンカの原因は小さいことだったと思う。
崇さんは私の7つ年上で、そのせいかいつも私をどこか子ども扱いする。
見くびっている、という意味ではなくて。大切にしてくれているからこそ、だと思う。
だけど、私はもっと崇さんとくっつきたくて、距離を詰めようとすると、かわされてきた。
だから、そんな崇さんに不満をぶつけた。
「ケンカ」というよりは私が一方的に怒って、崇さんは終始困った顔をしていたのだけれど。
そんな崇さんの態度に私はもっと悔しくなって、「合コンに行って新しい人を見つけてやる!」なんて叫んで、崇さんのアパートを飛び出したのだった。
間違いなく、私は子どもだ。
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