短編そのた | ナノ


▼ 

この公園を歩くのは、久しぶりだ。

小学生の頃、私が『神隠し』に遭った公園。



森も道も池もあるこの公園が、私は大好きで、しょっちゅう友達と遊びに来ていた。

だけどある日、誰も遊んでくれなくて、私は一人でこの公園に来た。


せっかくだからいつも行かないところへ行こうと思い立ち、少し木々の深い森へ足を向けた。


気付けば、舗装された道が獣道になっていて、遠くに見えていたビルやデパートは見えなくなっていた。

見渡す限り、森しかない。

振り返っても、森しかなくて、帰り道がわからない。


おあつらえむきに、そばに切り株があったので、私はそこに座り、考えた。

進めば森を抜けられるだろうか、それとも戻ってみるべきだろうか。

不思議と、怖さは感じなくて、だけど、帰らなければ母が心配するだろう、と思っていた。


すると、

「あれ、きみ、越えて来ちゃったのかい?」

頭上から、柔らかい声がした。


声のした方を見上げる。

大きな木の枝にまたがるようにして、若い男の人がこちらを見ていた。

ぶかぶかのシャツとズボンらしきものを身につけ、長くもないのに後ろ頭の真ん中あたりの髪を、変な紐で結んでいる。

私の周りの人たちとは『違う』ひとだと、なんとなく直感した。



prev / next
(1/18)

bookmark/back/top




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -