▼ chap.15 繋がる真実
『いちばんに愛していないと、駄目なの』
いちばん。
『いちばん』がはっきりとした『形』で見えてしまうことは、怖くはないのだろうか―――
「あれ、日夏、早いな」
「……!早瀬こそ。昨日遅かったのに」
日夏は、父の書斎で早瀬と鉢合わせた。
秋吉の蔵書で溢れ返るこの書斎は、早瀬のお気に入りの場所だった。
居間が男性陣の寝床になっているため、落ち着ける部屋を探して日夏はここにたどり着いたのだが。
「やっぱりいろいろ考えてたら、ゆっくり眠れなくて」
「わたしも。……あったかい紅茶、半分飲む?」
「ありがとう、一口だけもらうよ」
昨夜は本当にいろいろなことがあった。
流星群を眺めながら二人きりで過ごしていたはずが、飛鷹王子と恋人・鈴懸が突如現れ――それからは驚きの連続だった。
息子を憎む国王、その犠牲になっていた鈴懸。恋人を救いたいだけだったはずの飛鷹王子は、実の父によって反逆者の烙印を押された。
しかも、二人を救うために自分の力が必要だと聞かされ、日夏は今も、わずかに混乱している。
「凍瀧さん、いつ来るんだろうね」
「そうだな。またぬいぐるみを通して話し掛けてくるのか直接来るのか、どっちかもわからないし」
机の上には、昨夜凍瀧が交信に使った犬のぬいぐるみが置かれている。早瀬が持ってきたのだろう。
「鈴懸ちゃんは?よく寝てる?」
「うん。さすがに疲れがたまってたんだろうね、ベッドに入ってすぐ寝ちゃった」
隣で眠った日夏は、起こさないよう注意を払いながら、ベッドを抜け出したのだった。
夜の間ずっと、かよわい指先が日夏の腕を掴んでいた。無意識であろうその行動に、日夏は鈴懸の不安を感じ取った。
「王子も熟睡だよ。なんか畏れ多くて同じ部屋で雑魚寝するのも気が引けてさ」
垂氷とクロはまったく気にしてないみたいだけど、と早瀬は苦笑した。
そして、
「誕生日、中途半端になっちゃったな」
早瀬がぽつりとこぼした言葉に、日夏は目をまるくした。
「覚えててくれたんだ……」
「え?いや、そりゃそうだろ?」
お互いがお互いの反応に驚く。
「だって、それどころじゃない状況になっちゃってるから」
日夏自身もベッドに入る直前に思い出したくらいだ。
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