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「っ、ん……!」
ブラウスのボタンを上からゆっくり三つだけ外し、結城さんがいつになく丁寧な手つきで胸を弄り始める。
その間にも降り止むことのない口付けに迫られ、一歩ずつじりじりと後退するとやがて腰の辺りにテーブルがぶつかった。
「ぁ……っ」
倒れそうになる身体を結城さんが支えてくれる。
「こうしてると、離れるのが余計に淋しくなる」
「そんなの……私だって……、んっ……ぅ……」
スカートを捲りショーツをするっと腿まで下げると、長い指で秘部を撫でる。
慣れたその優しい感触はじわっと蜜を溢れさせ、快楽へと導いていく。
「はっ、ぁ……んっ……」
「どう嘆いたって時間は待ってくれないからな……今日は、少しでも長くお前を感じていたい」
そう耳元で囁き自分のベルトを外すと、私を軽々と持ち上げてテーブルの上に乗せた。
同じことを思い感じてくれていたその心が嬉しくて。私は彼の背中に腕を回して身を委ね、当てがわれた硬いモノを飲み込んだ。
「は、あぁっ……ぅ、んんっ……!」
「は……何度抱いたって飽きないな、お前の中は……」
結城さんが激しく突き上げ、ぐちゅぐちゅと音を立てる。
こんな場所でいけないことをしている背徳感が淫らな気分を煽り、気を許せばいつだって理性を飛ばしてしまいそうだ。
「んっ、ぁぁっ……はぁっ、結城さ……ん、そんな、っ……だ、め……」
「……愛してる、佐和」
甘い言葉と熱い吐息を零しながら彼のモノが奥深くを貫く。
びくびくと小さく震え仰け反った身体に、ドクンと熱い精が放たれた。
◇◆◇◆◇◆
「あーあ、結城さんがいないと怒号も笑い声もなくて静かっすねぇ」
クリスマスから半月が過ぎた。
一週間で戻る予定だったが商談が長引いたようで、新年を一緒に迎えることはできなかった。
仕事の邪魔になってはならないと自分に言い聞かせ、この半月は連絡もほとんど控えたつもりだ。
さすがに寂しくなってきたなぁ……結城さん、今頃何してるんだろう……。
「―――ただいま」
頭の中で描いていたはずの声が突然耳に届き、驚いて目を瞠る。
振り返れば、コートを羽織り少し額に汗を浮かべた結城さんがお土産袋を掲げて立っていた。
「うわぁっ、結城さん! 帰ってきたんすか!?」
彼を慕う部下たちが一様に囲み、たちまち賑やかさを取り戻していく。
「何だ、すごい歓迎ぶりだな。俺がいなくてそんなに寂しかったか?」
「そりゃあ、当たり前じゃないっすか! ……あ、でも」
何かを思い出したように後輩の一人がくるっと私の方を振り向いた。
「一番寂しがってたのは、佐和さんっすよね?」
「……っ!?」
皆の視線がこちらへ集中し、結城さんともばっちり目が合ってしまう。
「わ、私は別にっ……」
「もう隠さなくたっていいっすよー。俺たちが知らないとでも思ってるんすか? 二人が付き合ってること」
「!?」
「ほらね、佐和さんはすぐ顔に出るし、結城さんは結城さんでデレデレだし。そりゃ気付きますって」
「待て。俺がいつデレデレしたんだ?」
「やだなぁ、用もないのにわざわざ会社はどうだ? 佐和さんは元気か? セクハラされたりしてないか? って、本人に聞けばいいことを俺に電話してきたじゃないっすか。何度も言いますけど、そんなことを聞く結城さんの方がセクハラなんすからね!」
「そ、そうだったんですか? 結城さん……」
「ああ……いや」
「ていうかー、社内恋愛は禁止じゃなかったんすかねぇ?」
ほんのり頬を赤らめる私たちに周囲はにやにやと笑みを浮かべている。
そんな彼らに結城さんは軽く咳払いをして一喝した。
「ったくお前ら、浮かれてるな……。いいか、今後も社内恋愛禁止は継続だぞ」
「えぇぇ!? 可愛い部下を差し置いて自分は佐和さんとデキてるくせに、何言ってんすかぁぁ!?」
「女に飢えたお前らのことだ。変な気起こして佐和に手を出さないとも限らないだろ」
「うわっ、結城さんって結構嫉妬深いタイプっすね……」
一瞬で覇気を失った部下たちに結城さんがふっと笑う。
そして、つかつかと私の前に歩いて近づくとグッと腰を抱き寄せた。
「嫉妬深い男は嫌いか? 佐和」
「っ、き、嫌いじゃ……ない、です……」
恥ずかしさに口ごもりながら答えると彼は満足げに微笑む。
会いたかった、と耳元で小さく呟いてから優しく触れるだけのキスをくれる。
「ただいま、佐和」
「ふふ、おかえりなさい……結城さん」
私もあなたに会いたかったです。
その言葉を繰り返すように、私は何度も心の中で呟いていた。
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