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シャワーを浴びてリビングへと戻ると、一足先に待っていた空が私を手招きする。
「こっちおいで」
招かれるままに隣へ腰掛けると、また空は私を押し倒して上へと重なる。
「ちょっ、空!」
「学習しないなぁ、栞は。もしかして襲われるの分かってて俺に近づいてる?」
「バカ、そんなわけないでしょ! ていうか、まだ髪が濡れたままで……」
「うん。色っぽくてそそる」
「あのね、そういう問題じゃなくて」
何とか押しのけようとする私の手を空がぎゅっと掴んで制圧する。
でもそれは痛くなくて、むしろ温もりすら感じるような優しい手つきだった。
「一生このままでいーのに。誰にも邪魔されず、栞を毎日独占できる」
ふいに口にした空のその言葉が私の鼓動を弾ませる。
そんなの、願わくば私だって……。
「もう……空って本当ズルいよね」
「は? 何、急に怒ってんの」
「意地悪したり優しくしたり、いつも私の方が振り回されっぱなしなんだもん。弟のくせに生意気」
「別にそんなつもりないけど。不満があるなら振り回してみれば? 栞が、俺を」
「む……」
挑発的に口角を上げた空に、私は腕を伸ばしてシャツの胸元を思いっきり引っ張った。
「うぁっ、危ね……!」
私に向かって崩れる体をどうにか支えようとするも、そんなのは手遅れ。
空の重みを全身で感じながら、私は彼の唇を塞いだ。
「……」
いつも空がしてくれるみたいに……何度も何度も甘いキスを交わす。
一瞬目を丸くしていた空も、私が舌を絡めると次第にそれに応えてくれる。
隙間から零れる熱い吐息が再び体を火照らせた。
「んっ……」
余韻を感じながらゆっくり唇を離すと、何だか急に恥ずかしさが込み上げてきて頬が赤く染まる。
「……す、少しはドキドキしたでしょ?」
「いや」
空は首を横に振って笑みを浮かべる。
「少しじゃなくて、すげーした」
耳元で囁かれる声に私の胸はキュっと締め付けられて。結局これでは、どっちが振り回されているんだか……。
「栞が誘ったんだし、このまま食っていーよね?」
そう言って落とした視線の先には、窮屈そうに膨らむさっきと変わらない姿。
「え、えぇっ!? だってさっきしたばっか……」
「はぁ? 一回ヤッたくらいで終わると思ってんの? 栞だってまだまだ満足してないくせに」
「うっ……」
「覚悟できてる? 許された時間は、一秒も無駄にしないよ」
その果てなき貪欲さに苦笑いしながら、お返しとばかりに降り注がれる口付けを受け止め静かに身を委ねた。
許された時間【完】
2015/08/20
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