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「何だこの匂い……チョコ? ああ……今日って、バレンタインだっけ」
リビングに漂う甘い香りに気付いた亮がキッチンを覗く。
「……そうだよ。だからダメって言ったのに」
せっかくの手作りチョコは、まだチョコを溶かしてもいないうちに見つかってしまって。
完成したら亮の元へ届けようというサプライズ計画も亮のせいですべて台無しだ。
しょんぼりする私に亮は驚いたように声をかける。
「お前が作るのか?」
「え?」
「いや……ほら、毎年俺と悠にくれるチョコってその辺のスーパーで買ったやつだろ? 手作りなんて面倒くさいとか言って」
「それは……義理チョコだったから! 今年は、その、本命だし……?」
「それってつまり、俺のためのチョコってこと?」
「他に誰がいるってのよ……。今年は亮にちゃんと自分で作った物をあげたかったけど、私、作ったことないから上手くできるか不安で……それで一週間前から毎晩ずっと練習してたの」
「……」
白状するのは少し恥ずかしかったけれど。
亮も同じように頬を赤らめ、視線を逸らしながら手で口元を覆う。
「はぁー……やっべ。嬉しすぎて、ニヤけそ……」
「ふふ、亮の照れた顔、久しぶりに見たかも。……バレちゃったけど、せっかく材料買ってあるから作るね。亮はそっちでテレビでも見て待ってて」
「チッ、わかったよ。塩と砂糖間違えんなよな」
不満そうな顔をしつつも、どこか嬉しそうに亮はリビングのソファへ座った。
私は改めてエプロンを結び、キッチンに立つ。
よし……頑張ろう!
◆◇◆◇◆◇
ココアベースのふっくらとした生地が焼き上がり、あとはチョコレートクリームとソースを作れば甘いチョコケーキの完成だ。
ボウルの中でゆっくりとチョコを溶かしていく。
「おい、陽菜」
夢中になって背後の気配に気付かなかった。
亮が突然私の名前を呼び、後ろから私の肩を包み込む。
「亮!? ちょっと、まだ途中なんだから邪魔しないでよ」
「もう無理。待ちくたびれた。俺の相手もしろよ」
「もうちょっとだから待ってて……って、きゃぁ!?」
両手が塞がっている私の服の裾から手を入れ、いきなり亮が私の胸に触れた。
「ば、ばか! どこ触ってんの……!」
「邪魔はしねーって。ほら、手は動かせるだろ?」
「そういう問題じゃなくて……!」
「ああ。触られると感じちゃうから困るって?」
「違……っ、ひゃぁっ!?」
亮は服の中で器用にブラを外し、指の先で乳首を軽く摘む。
電流のようなものが身体を走って思わず声が上ずってしまった。
「何が違うんだよ、そんなエロい声出して」
「それはっ……亮がいきなり触るから、びっくりしただけで……」
「俺のせいにすんなよ。お前だって、結構その気になってるクセに」
首元にかかる息がさらに私を熱くさせる。
「んっ、亮……はぁっ!」
尖った部分を擦る指の刺激に耐えられなくなり、持っていたボウルを置いて亮の腕を制止する。
「なぁ……そのクリーム、俺に味見させろよ」
「う、ん……」
言われるままにクリームをスプーンですくって亮の口元へ運ぶと、ぱくっと一口でそれを口に入れる。
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