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「ふわぁぁ……おはよう、祐一」
まだ寝ていたいのに。
朝とは日々容赦なくやってくるものである。
「おはよ、奈々」
祐一が焼き立てのトーストと目玉焼きをお皿に乗せてテーブルに置く。
今日はスーツじゃないんだ……役所で働く公務員なのに平日に休みだなんて羨ましい。
ぼーっとする頭でそんなことを考えながら、時計を見上げる。
「あっ、ごめん…今日は朝ご飯いいかな。一本早い電車に乗りたいの。もう行かないと」
せっかく用意してもらったのに申し訳ないとは思うけど。まだ寝起きで、あんまり食欲もない。
「あー、そう。帰りは?遅くなる?」
「わかんない。仕事、残業かもしれないし。って、乗り遅れちゃう…行ってきます!」
「ん。行ってらっしゃい。気をつけろよ」
何の代わり映えもない朝。
同じ毎日の繰り返し。
念願だった出版社の仕事は、入社から三年が経った今では何となく面白みに欠ける。
もっと近場で就職すれば良かったかなとか。
もっと他の選択肢があったんじゃないかなとか。
一時間も電車に揺られていると、くだらないことばかり考えてしまう。
お腹がぐうぐう鳴って、恥ずかしさに眠ったふりをした。
やっぱりご飯食べてくれば良かったなぁ……失敗…。
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