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「うわっ、最悪! 雨降ってる!」
大学帰りに立ち寄った本屋さんを出ると、外は突然どしゃ降りの雨。
今朝の天気予報ではそんなこと一言も言ってなかったのに。
欲しかった本は売り切れてるし、ツイてない一日……。
「はぁ……せっかく買ったばっかりの洋服なんだけどなぁ。走って帰るしかないよね……」
小さくため息をつき、仕方なくその場を後にする。
何だかいつも以上に不気味に感じる夜道を走り、ようやく一人暮らしのアパートへ辿り着こうとしていたその時だった。
ふと、駐輪場の片隅にうずくまる黒い影が目に入って足を止めた。
「えっ……、猫!?」
おそるおそる近付いてみると、そこには小さな黒猫がぐったりと倒れ込んでいて。
慌てて抱え上げたが、どれくらい雨に打たれていたのかすっかり体は冷え切っていて意識もない。
よく見ると背中に無数の傷跡が残っていてとても痛々しい。
「ひどい、誰がこんなこと……」
私は急いで階段を駆け上がり、部屋へ戻るなりすぐに猫を毛布で包んだ。
傷口にガーゼを当てて一通りの応急処置も済ませ、温めたミルクを傍に置いてみたもののやっぱり反応はない。
息はあるみたいだけど……すごく苦しそう。
「ごめんね。明日になったら病院へ連れてってあげるから、今夜はここで我慢してくれる……?」
ベッドに寝かせてそっと頭を撫でると一瞬薄っすらと目を開けたが、余程体力が消耗していたようですぐに深い眠りへとついたようだった。
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