隼人が誕生日を祝ってくれる
「あ、あのよ」
ソファーで寝そべりながら雑誌を眺める彼女に、思い切って声をかけると間延びした返事が返ってきた。
「今日は、お、お前の誕生日だ、ろ」
「誕生日?」
キョトン、と彼女が可愛らしく首を傾げた。
とぼけているのかと、一瞬頭にきたが、今日は彼女の誕生日だ。我慢我慢。
「その、よ」
あぁ、上手く言葉が出てこない。伝えたい言葉は、すごく簡単なのに。
こんな時ばかりは、自分のこの素直じゃない性格が恨めしい。
うだうだ悩んだって仕方ない。案ずるより産むがやすしとも言うし。
「た、誕生日おめでとう!」
たったそれだけの言葉を言うのに、こんなにも緊張をするとは思わなかった。十代目にいうときはこんなに緊張しなかった。
彼女はというと、あっけに取られた顔をして、此方を凝視していた。
「…隼人、」
「んだよ、もう一回は言ってやんねぇからな」
「あ、いや。祝ってもらったの、初めてで…」
そう言って彼女は頬を桃色に染めた。あぁ、見ている此方まで照れてしまいそうだ。
「どうしよう、スッゴク嬉しいよ、隼人!」
そう言って、彼女は思い切り抱きついてきた。いきなりの事で対処しきれなくて、後ろに倒れこんでしまった。
「ちょ、離れ、」
「隼人、私ね、今まで生きてきた中で一番幸せだよ」
そう言って涙をこぼしながら笑う彼女が愛おしくて、ギュッと抱き締めた。
「お前が望むなら、この先もずっと、祝ってやんよ」
オマケ
「隼人、隼人!」
「あ?」
「あのね、隼人の事、世界で一番好きだよ!」
「ばっ何言ってやがる!」
「隼人顔真っ赤ー」
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