今日一番のため息を吐く山崎くん
あ、山崎くん
彼女が振り向いて、今日私初めて一くんから一本とったんだよ!と嬉しそうに言った。また仕事ほっぽって斎藤さんと剣の修行をしていたとかそんなことはどうでもいい。そんなことより、
「髪はどうしたんですか…!」
一瞬キョトンとして、それから彼女は眉を下げて仕方なさそうな顔で笑った。あぁ、これ?昨日浪士と切りあったときにうっかり。なんてことのないように言うけど、事は重大だ。いくら男装しているとはいえ、彼女は女なのだ。女が、髪を短くするなど言語道断。そんなのはまだ小さい子供と出家した女性だけだ。第一彼女自身が言っていたのだ、これは願掛けも兼ねて伸ばしていて、とても大切にしているのだと。事実、彼女はどんなに忙しくても髪の手入れを欠かさなかった。そんな髪の毛が、浪士ごときに…
「山崎くんが気にすることじゃないよ」
あまりの衝撃に狼狽する自分に、彼女は少し怒ったように言う。
「ですがあんなに大切に…」
「だって切れちゃったのはしゃぁないでしょ。それにまた伸ばすしー」
そんな事より浪士捕縛したの誉めてよ。そう言ってそっぽ向いていじける彼女に、俺は今日一番のため息をついた。
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