神田と不安がる彼女


月明かりに照らしだされた部屋の中で、すやすやと眠る彼をみてふと、私は思った。
"私はあと何回、彼の寝顔を見つめる事が出来るのだろうか"
彼はエクソシトだ。
神に選ばれし者のみが扱う事のできるイノセンスを扱えるが故に、常に死と隣り合わせの生活を続けなくてはならない。
私は、不安だった。
常に前線で戦う彼は、何時死ぬか、分からない。だから、もっと彼と一緒に居たいと思うし、もっともっと、愛し合いたいと思う。
それなのに。
彼は傷が直ぐに治るからといって、深手を負っても気にせず、放置しておくことがしばしばある。
医療班の同僚から聞くたびに、私は悲しくなった。
私は一体、彼の何なのだろう。
私は、何の為に彼と在るのだろう。そんな事ばかり、考えていた。「……んっ」
「神田?」
神田は体を起こし、こちらを見ると驚いたように眼を見開き、すぐに不機嫌そうに眉を顰めた。
そういえば、いつもならドアとノックすると途端に起きる彼が、今日は起きなかった。
疲れて、いるのだろうか。
彼はまるで大きな失態を犯したかのように、溜息を吐いた。
「ごめん、勝手に部屋に入っちゃって」
「別に良い」
「任務、どうだった?」
いつも通りだ、と素っ気なく神田は応えた。
「傷は?」
「ない」
「本当に?」
「あぁ」
見せてとせがめば、舌打ちをしつつもシャツを脱ぎ、傷がないことを証明してくれた。
鍛え上げられたその身体には、傷はない。
私はそれを見て、思わずほおが緩むのを感じた。
「よかった……」
今回の任務では、彼は傷を負わなかったのだ。
彼が生きて帰ってきたことの次にうれしい。
「神田、」
私が名前を呼ぶと、彼はいつものように機嫌の悪そうな声色で、返事する。
私は未だベッドの上に座る彼に抱きつくと、耳元に口を寄せ、囁いた。
「大好きよ、ユウ」
貴方が無事で、良かった。
貴方を喪いたくないの。
だから、次も無事に帰ってきてね。


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