K.Azusa
「荷物いっぱいだね、梓」
「見てないで少しくらい持ってよ」
軽そうに見えて結構重いんだから。
梓はそう言って軽くため息を吐いた。
今日、12月20日私の前で少し不機嫌そうに眉を寄せている彼──幼なじみの木ノ瀬梓の誕生日だ。文武両道を自で行く彼は、すごくモテる。何をさせても大抵のことはできるし、同年代にしては少し大人びていて、そこがまた惹かれる要素なんだろう。頭もよくてスポーツも出来て、少し大人びている梓はみんなの憧れで、オンナノコたちの、王子様だ。梓の好きなもの、嫌いなもの。今ハマっているもの、趣味。もちろん生年月日に星座まで。同年代のオンナノコたちはみんなこぞって梓の好き嫌いや趣味を調べて、星座が分かれば星座占いで相性はどうとか。とにかく彼はモテる。そんな彼の誕生日なのだから、オンナノコたちがプレゼントを用意してないわけがない。
「全部梓のでしょ」
「だから重いんだってば」
「重いもの女の子に持たせるの?」
梓が微妙な顔をしたのですねを蹴ってやった。失礼だな、私はれきとした女の子だ。スカートだって履いてるでしょ。
「スカートの下にジャージ履いてるのは女の子って言わない」
「言いますー。第一寒いだから仕方ないでしょ」
「スカート長くすれば」
「えっダサいじゃん」
男の子は女の子が寒いって言うと決まってスカートを長くすればっていうけど、女の子に取ってこのスカートの長さはファッションなのだ。ニーハイを履いて絶対領域、タイツを履いて綺麗なライン、ハイソで女子高生らしさを。スカートの長さは人それぞれだけど、だいたいパンツが見えない程度。見えそうで見えない、スカートは時として男の子を釣るための道具でもあるのだ。寒いからと言ってシャツのボタンを上まで閉めないのも同じ。セーターをワンサイズ上のを着るのも、ファッションだし、全部女の子の武器だ。
「そういう問題?」
「そういう問題ですぅー」
今日もきっとオンナノコたちは武器をフル活用で梓を放課後遊ぼうよ、とでも誘ったのだろう。だけど悲しいかな。努力むなしく、梓は今日も私と帰るようだ。というか、梓は彼女作らないのかなぁ。こんなにモテるなら彼女の一人や二人くらい朝飯前だろうに。あ、二人は不味いか。
「あ」
「なに?」
「梓誕生日おめでとー。言うの忘れてたわ」