02



読み終えた本を机の上に置いて、伸びをした。開いた窓から風が入ってきて、彼女の髪を弄ぶ。善鶴はくすぐったそうに笑んで、窓に目を向けた。つい昨日までは雨雲が立ち込め、暗鬱としていたのに、今日はとても爽やかだ。頬を撫でる風が心地よい。
彼が最後にみた空もこんなふうに美しかったんだろうか。
先程まで読んでいた本を手に取り、その表紙を撫でた。その横顔は、満足気である。面白かったのだろう。
おもむろに善弦は立ち開がって、棚から財布を出すと、病室から出ていった。



この病院の地下一階には、コンビニと本屋、床屋さんなんかがある。
善鶴は本屋に入ると、真っ先に小説コーナーに向かった。背表紙にかかれた題をひとつひとつ見ながら、惹かれた本を手に取る。さっきまで読んでいた現代が舞台の青春モノもいいが、やはり時代小説の方が読みごたえがあっていい。
手に取った本をぱらぱらと流し読む。少しして善鶴は本を閉じると棚に戻した。
他に特に惹かれるタイトルがなく、新刊コーナーを見に行くと、好きな作家の新刊が出ていた。妖怪の絵に、和紙のような触り心地の表紙。相変わらずなシンプルで且つ上品な装丁に、思わず笑みがこぼれる。今回はどんなお話なのか、楽しみだ。善鶴は早速手に取った本をレジに向かった。
お会計を済まし、本を片手に本屋をあとにする。エスカレーターを登りながら、窓を見上げる。溢れ落ちてくるひかりに、善鶴は目を細めた。心地好い、春の日差しだ。こんな日には外で思い切り日向ぼっこしたいものだ。……今日は屋上庭園で読もうかな。


屋上には誰も居なかった。ベンチに本の入った袋を置いて、思い切り伸びをしながら息を吸い込んだ。鼻腔を花のいい薫りが擽る。夏の今は、ひまわりなんかが咲いていた。
「ほーんと、いい天気」
少し日差しが強すぎる気もするが、初夏の日差しにたまに吹き抜ける風がが心地い。
善鶴はベンチに腰掛けると、早速本を読み始めた。





[] | []
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -