01
──ねぇ、伊作。生まれ変わりって信じる?
生まれ変わり?
うん。私ね、生まれ変わっても絶対に伊作を見つけるわ。だからね、伊作。
うん?
私が死んでも、落胆しちゃだめよ。ちゃんと生きて、死んでね。それで、来世で会いましょう。約束よ、伊作―‐-…‥
多分善鶴は、分かっていたんだろう。今度の忍務が、とても危険でもしかしたら生きて帰ってこれないかもしれないと。僕は善鶴をうらんだ。帰れないかもしれないと知りながら、忍務へと向かった彼女を。最期まで彼女は忍だった。
善鶴のものは、全部燃やした。
見ていると辛くて、悲しくて、胸が張り裂けそうだった。だけど、僕が彼女に贈った萌黄色の髪紐だけは、手元に取っておいた。
三日三晩泣いた。
そして僕は、決意した。
きちんと生きよう。
生きて生きて生きて、それで、死のう。
善弦が望んだように。
そしてまた、来世で会おう。
もう一度、僕と恋をしよう、善弦。
大好きだよ、善弦
幼い頃から繰り返し見た夢が前世なのだと気付いたのは、16の時だった。何をしていても、心のつっかえが取れなくて、それが高校に上がってふと無くなった。程なくして、前世の同輩たちと同じ学校だと言うことに気付いた。全員が覚えているわけでは無かったけど、嬉しかった。でも、満たされなかった。仙蔵たちと遊んでいてもどんな女の子と付き合っても、ダメだった。満たされない。つっかえは取れたのに、どうしても、何をしても。
何かが、足りない。
そしてある晩、夢を見た。
夢の中で少女はひまわり畑を満足気に見下ろして、笑っていた。
『綺麗でしょう。君が喜ぶと思って』
『本当、とても綺麗…』
まるで物語の中に居るみたいねと彼女が言った。僕はそれに吹き出して、笑う。そしたら怒った彼女が僕の髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜて。それを避けようとして――二人揃って、ひまわり畑に落っこちた。
『もう、伊作がいけないのよ!抵抗するから』
『君が僕の髪をかきまわすからでしょー』
『だって伊作が笑ったんだもの』
拗ねたふうに唇を尖らして、彼女が言う。僕はそれにまた笑って、それから言った言葉に、彼女が真っ赤になる。
『伊作のばぁか』
照れた彼女が膝に顔を埋める。僕は彼女を後ろから抱き締めて、
『好きだよ、善鶴』
『…私も』
善鶴。
口に出してみると、しっくりした。足りないピースがやっと合わさったような、そんな気がした。
それから方々手を尽くして調べたけど、まだ彼女には会えていない。仙蔵や留三郎たちとはすんなり会えたから、君にもすぐに会えると思ったんだ。
ねぇ、僕は生まれ変わったよ。
善鶴。
君は今、何処にいるの?
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