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派手な赤い壁紙。飾られた金屏風。
少し趣味とはかけ離れた部屋だが、そんなことは大きな液晶テレビの前には無意味だ。

「ナマエちゃん、かまってえな」

敢えて猫の皮を被せた高い声が右耳に届く。
同時に風呂上がり然とした湯気のような空気を肌で感じた。
ダメです、もう少しですから。短く返してゲームの世界に浸り直す。
気怠げな頭が右肩に寄りかかってきたので、少しだけこちらの体重も預けてみる。
お互いにバスローブを着ているのでいつもよりも柔らかい心地がした。
一方、大きな大きな画面の向こうではヤクザとクリーチャーが戦っている。この差たるや。

「テレビくらい買うたる言うてんのに」
「真島さん、待ってる間に するのがいい」
「……そう言うてくれんのは、悪い気ぃせんけど」

一旦考えるような間を置いて「しかし退屈なんやで」と不満が届いた。
彼の腕が肩に回ったが、ちょっかいはかけてこないので弁えてるらしい。
でもまあ、そうだなあ、確かに少しは申し訳ない。
真島さんがお風呂に入っている間だけにしようかと、思ってはいたのだけど。不意に超絶長いイベントからそのままボス戦に流れてしまったのだから。

「お酒でも飲んで、待ってて、ください よ」

テレビ側に意識が持って行かれてるせいで、片言になっている自覚はあった。
真島さんがそれを気にしたかどうかは知らない。
ただ素直に氷と、ライターの音が聞こえた。







ゲーム機の電源を落として立ち上がる。
立ち上がってコントローラーと本体を繋いだ。
昔と違って無線で扱えるのはいいが、まだまだこういうところは不便なままだ。
無信号による青い画面は真島さんがリモコンで閉じてしまった。

「お酒、別の取ってきましょうか?」
「ええ。はよおいで」

伸ばされた右手と左手を繋いで、膝の上に座ってやる。
一つしかない眼はそれで満足そうだ。
その涼しげな首元に腕を絡めると、今日初めましての唇。ウィスキーとタバコの味がした。

「お待たせしました」
「よお焦らす子やで、ほんま」

ヒヒ、っと笑う声。
そうやっていつも私の我儘をなかったことにしてくれるのは何故だろうか。
バスローブが解かれて、膝立ちの姿勢へと誘導される。太ももと腰に大きな掌を感じた。
すらりとした形をしているのに、私のものよりふた回りは大きいその手が好きだと言ったことは未だにない。

「良い子はもう寝とる時間や」
「しょうがないですよ。悪い子だから」
「せやなあ」

ブラで盛り上げられた乳肉が軽く齧られる。
痛いような痒いような。歪めた目元で視線をかち合わせると大層愉快そうだ。
何がそんなにいつも楽しんでいられるのか。
これだけ筋肉のついた体だからなんでも滑稽にできてしまうのか。肩と首と、皮下脂肪の少なさに触れながら思う。
目があうといつもよりも白眼がちなせいで、どきりとした。

「ナマエちゃんは、こんなヤクザのおっさんといーっぱいセックスするような、悪い子やもんなあ」

あまりにもど直球。
くらりとしたのはこれからを想像してしまったからとか、決してそんなことではなくて、ただ、背中のホックが外されたからだ。
きっと、酸素を吸いすぎてしまったのだ、おそらくは。




悪趣味に乾杯 160322