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なにか聞かれた、と思った。
正直な話感覚がいっぱいいっぱいで何の余裕もないのだ。

「社長のこと?」
「っ……ん」
「なんだ、妬いちゃいますね」

下から突き上げられて、意思との分別なく声が出る。
痛みはないが、奥深くを刺激されるのは恐ろしい。何か、帰ってこれなくなるような心持ちがして。
少し遅れて思い出した。何考えてるんです?と訊かれたんだ。

「あ、っ……やっ 尾田さん、だって……」

社長のことばっかりなくせに。

どうして尾田さんとこんなことになってしまったのか。
私は立華さんのことが好きで、尾田さんも立華さんが好きで。
だから私たちはいつの間にかお互いがすきで。
好きの種類がどうだとか、訳が分からないから、こうして歪に愛の行為を真似するのか。

はっと、彼が息を吐いて動きを止めたので、私の方でも呼吸を整えようとする。
休憩だ。繋がりはそのままに、前に倒れて体をべたりとくっつける。
きっと彼と同じくらい、ずっと鍛えられた体の上に。

「私だって……尾田さんの立華さんに、なりたいんですよ」
「それはそのまま返すよ」

密着した体から互いの呼吸が伝わり合う。それでも今以上に一つになりたい。
あなたみたいにあの人を守りたいし、あの人みたいにあなたを頼りたい。
健気すぎて涙が出そうだ。
いや、ちょっと泣いてるな。
理由がどこかは分からないけど。

悪戯っぽく笑っている唇にすがりつくと彼もそれに応えてくれた。
ドロドロとしたものを、互いに吐き出しあっているような、そんなキス。
そのままゆっくりと腰を抽送されて、激しくされた時とは全く別の、呻きに近い喘ぎ声が漏れる。
上体をなお一層きつく抱きしめられて、何もかもから逃げ出せない。
ゆるゆると中をかき混ぜられているせいで、意識が曖昧になる。私を惚けさせているのは尾田さんで。あの人ではない。

「おださん……っ、おだ さ、ん……」
「っ、そんな声でさ 呼ぶなよ」

彼の顔に触れてもよく見えない。
きっと、近すぎる。
そう、そうだ、きっと。
いつか私たちは一つになる。

そしてあの人だけが残ればいい。




蠱毒 160320