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肩を抱いた腕は、行く先でしかとナマエの手を握っていて。たったそれだけのことが、身動ぎ以外を許さなかった。空いた片方の腕は、脇の下をくぐって世良の背中を抱くぐらいのことしかできなかったし、吐いた息は彼の胸元に当たって、そしてそのまま吸うことになった。呼吸をする度、湿度が上がっていくのが分かる。高級なマットレスは、ふわふわと体重を拡散させるだけだった。
指の一本。静かに中を撫でられてどれ位経ったか。じわり、じわり。優しい、と形容してもいいはずなのに、甚振られているのかと錯覚する程度には執拗だった。今まで誰からも、世良からだって、こんなにも緩やかな悦びを与えられたことはない。

「世良さん……っ、ふ」
「ん?」
「今日……意地 悪、ですか」

頭上で、ふと微笑む気配がした。答えてはくれないのか。
混ぜられるような快楽とは違って、意識も十分とはっきりしている。瞼も、呆然とではあっても開かれたままになった。それがまた、相手の存在を意識せざるを得なくなって、余計に気恥ずかしくさせた。しかし胸を上下させてしまう程度には、呼吸は大仰に変わっているし、伝わる動きによっては引きつるように息が詰まった。

「はぁ っ」

出し入れをされている訳ではないということは分かる。ゆったりと、おそらく浅いところを撫でられていて、関節が入り口を刺激したり、しているのだろうか。首を傾げて世良の胸に頬を摺り寄せると、同調するように肩をまわる腕に力が込められた。遮られた視界を甘んじて、瞼を閉じると、時間をかけてゆっくり奥まで通されて、背筋にぞわぞわとしたものが走る。息の間隔が少し狭まった。そこで一寸留まってから、さらに時間をかけて引き抜かれた。いくつかの指先が、行く先を示唆するように撫ぜた。

「っ、! あ、あっ んん……んぅ」
「なんだ、一本じゃ物足りなかったのか」
「っ……ちが、っ やだ 、ん、あぁ」

ちがう、と、言いたい。変わらない遅々とした早さで、割って入る体積が増やされた。焦らされたせいなのか。肩がすくみ、世良の体に縋り。自分の制御の外で、収縮が繰り返された。先ほどとは打って変わって、息をする度に「あ」の音が漏れた。もう世良の動きは止まっているというのに、欲しがりのようで恥ずかしいではないか。
関節のあちこちが強張って、全身の力が抜けるようだった。体が勝手に世良の指を感じて、反応して。掌を立てて背を掻くと、額に唇が落とされた。少しだけ安心したら、ゆっくり、ゆっくりと引き出され、ぎりぎりのところで止められて、声が漏れた。

「あ、あっ ぁ……ぬい.て くださ……ぅ、あ」

これだけ執拗にされては、達するというのがどういうことか分からなくなる。もうずっとそんな状態でいるような気がするし、頭がおかしくなりそうだ。今一度浅瀬に戻ってきた感覚は、次第に前後する度合いを速めていって、ようやく許されたような心地がした。しかしそれはそれで、結局のところそれはそれで、なのだ。握られた手を離して、思わず、その秘部へと繋がる方の腕を掴んだ。意味はなかった。激しさを増すせいでぐちゃぐちゃと、届かなかった音が聞こえるようになった。そんなにも、そんなにもか。もう無理、と言えたかすら分からない。

意識が一度いっぱいになって、感覚が忘れ去られた。思考とは無関係に、躰が不規則に跳ねた。中身が空っぽになっていても、余韻が蝕むせいでなにも考えられない。世良がこれからを準備する間も、漫然とする他なく。当てがわれてようやく意識が覚醒したのは、単に本能のせいだと思った。首を振って、なにかしらを伝えようとすれば、体が寄せられ優しく抱きしめられた。背中を這う両腕とか、触れ合った唇とか、それだけで高揚できるぐらいには馬鹿なのに。口腔を犯した舌の離れ際、熱いものが悠然と奥まで突き立てられた。ひどい人だ。

「、は。よく……締まるな」
「ぅ うぅ、ひっ 。ぁ」
「そう辛そうな顔をするな」
「だっ、て …ぁ、せら さん、が……」

存分に、虐めた、からでしょう。これまでもずっと限界だった。こんなこと、高いところへ行ったまま、帰って来れなくなる。




雲居へ 160817