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ナマエから荷物が届いた。
ここに運んできた部下と同様に、大吾もその段ボール箱を訝しんだ。大きくもない、しかし小さくもない。大して重くない白の段ボールには、ウサギの顔が書かれている。なんでわざわざナマエは。珍しい。ここが極道の家でなければそんな一言二言で片付けきれただろうに。電話をかけると4回目で出た。

『はい』
「俺だ。荷物が届いたんだが」
『本当?よかった!
 何も言わずに受け取ってくれる?』

大吾が次の句を告げるのを待たずに電話が切れた。とりあえず開けろということらしい。質の悪いアメリカ映画なら途端に爆発するのが定石。しかし、こんな時ばかり物騒な想像が当たるはずもないので無視をした。
箱を開けるとビニールに包まれた衣類が。タオルかと思ったがバラバラと違う大きさに分かれて入っている。ということは服か。色は大きくいって二色。細かく言って大体6色。全て淡い色で大きい縞になっていた。
もう一度ナマエにかけると1コールの内に出た。

「……どういうことだ」
『見た?着た?』
「見たが着てねえ」
『可愛いでしょ』

喜色溢れる声で表情は容易に想像できた。顔が見えない分、いつもより大げさな陽気が伺える。おそらく、ウフフとかグフフとか笑っている。ほぼ白い一着を手に持つと、軽いビニールの音がして重力にしなった。

「これはなんだ、寝巻きか?」
『そうね。部屋着だし寝巻きだし。
 触ってみた?』
「いや、まだ袋から出してない」
『あらそう。すごいのよーモフモフって!
 大吾に着せたくて買っちゃった』
「……そうか」

俺は着せ替え人形になったつもりはないんだが。
大吾がそう思ったところでナマエの喜びはきっと変わらない。敢えて水を差すのは馬鹿のやることだ。それに、自分のために動いたナマエのことを、喜べないほど不感症ではない。少し飛び出たマイペース具合は簡単に目を瞑ることができた。
ところで、先ほど気づいた色の濃淡は、大きさの違いにも一致している。

『あ、分かってると思うけど白い方は私のだからね』
「ああ。ちょうど今それを聞こうと思ってた
 それより、今日は来るのか?」
『本当はそのつもりなかったんだけど……
 モフモフの大吾ちゃんに会いたいから行くわ』

そんなにも逢瀬が待ち遠しいという口ぶりは久方ぶりだ。悪いことばかりではない。いや、そもそもこの件で悪いことはなにもない。自分が少し玩具にされそうな予感ぐらいなもので。

『私のも凄く可愛いから。楽しみにしててね』

この後、大吾は気まぐれに袋に貼られた文字を検索した。
そのせいで気がそぞろになったことを、誤解なくナマエに伝えられる自信はない。




usagi 160602