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真島さんは、私をビッチ扱いしないんですね

言われた相手は飲みはじめのコーヒーを吹き出した。言った方は珍しい、と少し驚いた。ここが真島の自室でよかった
外ではヘリの音がした。ごく近い。事故だか事件だか。そんなことは一切無視をして、呆れた一日が始まる気配がした。

「うん?なんて?」
「いや、真島さんは私のことビッチ扱いしないなあと思って」
「……なんや、ビッチ扱いしてほしいんか」
「今そういう話してません」

いや、しとるや〜ん。という空気をダダ漏れにしながらも真島は何も言わなかった。この手の話は大体面倒で男には複雑すぎる。間を持たせるためにコーヒーを仰ぐには喉の準備が整っていなかった。
適当な野菜と加工肉で作ったサンドイッチをほいほいと皿の上に乗せてからナマエも席に着いた。彼女にとって少し温いコーヒーは丁度いい頃合いだ。

「やらしい下着でも買うてきたろか」
「いりません」
「今思いつきで言うたけど多分メッチャソソルワー」
「やだ絶対やめてくださいっていうかだからそういう話じゃなくて……」

硬いパンを噛みちぎりながら、少し苛立ちげに話す真島を実に男性的だと思った。違うそうじゃないとゴネるながらマグカップに両手を添えるナマエを実に女性的だと思った。
さっきからどないしてん、という真島はあえて神父や教師を演じようとした。振る舞いが感情を抑えることを知っていたからだ。さらなる気晴らしにスマートフォンを触った。ナマエはまだコーヒーを眺めている。真っ暗な底に、飲み込まれてしまいたいのだろうか。

「体から入った関係なのに、」
「それが? 気に入らんか?」
「こんなに普通に受け入れてくれるんだなと」
「うん」
「感動ヲシテイルンデスヨ?」
「何をカタコトになっとんねん」
「言ってる途中で恥ずかしくなりました……」

どうしたものか。真島は考える。自分だって百戦錬磨のうちの一人やで。そんなことを言えば事態が確実に拗れるだろうという分別はあった。ただ、それが事実であっても過去のことだ。現在の相手はナマエ一人だけで、なんとなくお互いそうなのだと信じて疑わなかった。証拠や言質があったわけでもないが、そう信じることができるならば友人なんて面倒なオブラートよりも、恋人扱いをする方がよっぽど気楽に決まっている。ナマエもそれを理解していると、勘違いだったのか、真相だったのか。「ほんまめんどくさいの」「存じております」。実のない応酬。

むせた気管が落ち着いてきたので改めてコーヒーをすすった。自分が自分に似ている、それだけなのに。相変わらず伸びた背筋でマグカップに手を添える姿はなんの自覚も持ち合わせていないようだ。不安に思う理由がこの部屋に落ちているわけでもないのに。真島が頬杖をついてその目線を下から覗くと彼女は身構えた。

「もうやめよか」
「なに、を」
「これごっつ可愛いと思うんやわ」
「さっきから携帯見てると思ったら!」
「ええやん、買ってくるから。それで仲直りや」




ちわごと 160510