光の首筋に唇を触れさせると、湿った髪が頬を濡らした。目線を少し上げる。きらりと光るダークアッシュに見惚れた。どきん。青々しく躍動する鼓動。逸る血流。その癖何と無く心もとなくなる気持ちに、そうかこれが恋なのかと理解した。

「馨、どうしたの。」
「何となく、甘えたくなって。」

光の肩口に顔を埋めると、じんわりと穏やかな熱が僕を覆った。湯上がりの熱はとても優しい。今日のバスソルトはマリンの香りだった筈だ。海と光の匂いが鼻を通って僕の中で昇華した。芳しいマリンブルー。波のように押し寄せて僕を染める。清しい芳香に誘われるように、ぐりぐりと頭を擦り寄せた。

「……誘ってるの?」
「甘えたいだけって言ってるデショ。」
「……そういうの、生殺しって言うんだよ。」
「へぇ、そうなんだ。」

知らなかったよ、と嘯きながら光の手にそっと触れる。ぴくりと反応を返す指先が面白くて、小さく笑った。緩く握られる僕の掌。重なる僕の指先と光の指先。其処から広がるものは何処までも広く、何処までも深い。存在しない最果ては、まるで海を思わせた。僕は知っている、人はそれを愛情と呼ぶのだ。

「……まぁでも、こういうのもたまには良いかも。馨可愛いし。」
「……誰が何だって?」
「馨、さっきからちょっと酷いよね。」
「そうかな。」

眉を下げて笑う光に、再び躍動した。そして心底思う。光に溺れてしまいそうだ。否、もう溺れている。足掻いても無駄だと、解っている。
ならばいっそ更に沈んでしまいたい、そう思いながら力を込めて握り返せば、僕を呑み込む果てしない青。
感慨のマリンブルーが、ただ其処には存在した。





title by joy

(前サイトより)


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