明日の天気

長かった、と言わないが長かった。パルマコスタ地方から、またハコネシア峠を登りハイマへ向かう。ソダ島辺りからハコネシア峠まで大体4日ほど。4日の夕方には着いた。恐らく、ロイドたちが強くなったのもあるのだろう。
それから一度、アスカードでアイテムを補充してからハイマへ向かう。急げば5日あまりで着くだろうが、この辺りにディザイアンはもういない。その他諸々の理由から、7日とゆっくり歩いてハイマへと着いた。


「観光用の竜を借りて来た」
「神子だっつったらタダでいいって。とにかく、今日は疲れてるし、明日だな」

ハイマに着くやすぐにヘバッたロイドとジーニアス。さすがに歩き詰めはきつかったようで、道端に座り込む二人をしいなは苦笑い気味に見ながら、隣に立っていた。


「やっとベッドで寝れる…!」


ベッドで寝たのはアスカードで最後だ。救いの小屋には簡易ベッドが少数あるだけで、それにはコレットとジーニアスが寝ていた。それに、そうそう救いの小屋が行く先にあるわけではなかったから、野宿というのも、かなりしてきた。

「なら今日は自由行動にしないか?明日には…世界が再生されるんだ」
「…そうね。今日は自由行動にしましょう。ただし町からは出ないこと。よろしくて?」


しいなの提案にリフィルが答えた。ハイマはそうそう大きな町ではない。だからすぐに見つけたられるだろう。宿にはリフィルが残ることになった。
高い山の中腹に位置する町のせいか、この辺は風が少し強い気がする。少し強い風をうっとうしくも思いながら、コレットやジーニアスと高見から救いの塔を見に行く、とシエルをも引っ張って走って行ったロイドたち。



「しいなは、どうするの?」

辺りにクラトスはいなかった。宿の隣にある小屋にノイシュと共にいるのが分かって、その場に残っていたしいなに問掛ける。何かを言いかけたしいなだったが、近付いてきたとある気配に肩をすくめていたのが見えた。

「ま、話したいのは山々なんだけどね。セレネにじゃないかい?お客さん。あたしはあと回しでいいさ!」


笑いながら町の外を指差したしいなを少し睨む。それから、逃げるように駆け出していった(恐らく前に此処で会った女の子に会いに行ったのだろう)厄介事を残してくれた、と深いため息をつきながら。私は足を町の外へ向けて歩き出す。そこに、誰がいるのか分かりながら。出来たら関わりたくない。←


「おー!救いの塔がよく見えるな!」
「高いね…どこまであるんだろう」

ロイドやジーニアスがはしゃぐ理由も分かる。コレットが愛想笑いをする理由も分かる。それでも、こいつらが望むことをしてやれないのは分かってる。救いの塔を見ながら、レムの塔の方が低いな、と笑った。あれは天を目指した塔だ。この世界の塔は、天へ続く塔だ。


「そういえばロイド…コレットの誕生日プレゼント、出来たらの?」
「……………あ、」

何やらロイドの時間が止まった。誕生日、というのがいつだったかは分からない。でも、それに合わせたプレゼントをロイドが送らなかっただろうというのは、分かる。

「誕生日だったのか?」
〈うん、神託の日にね!16歳の誕生日、神託が下るんだ。もうだいぶ前だけど…。あ、シエルの誕生日っていつ?〉
「ん?……さぁ、いつだったかな…」
〈シエル?〉


こいつらに、過去の話を聞かせてる。前にあまりに暇だって言うもんだから。つい。「聖なる焔の光」の話。それはまだ、あの鉱山崩壊までにはほど遠いところの話。

「どうしたんだ、ロイド、ジーニアス」

なんか知らないが二人に凝視されていた。なんだろうねぇ、とコレットが首を傾げていたのを見て、思いついた。あぁ、コレットの話か、なんて。


「コレット、声…出てないのに」
「なんでシエルと会話してんだ…?」
「……あれだ、読心術ってやつ」

昔、よくジェイドが言ってた。心が綺麗な人は人の声を読めるって。からかわれただけだってのは分かってた。分かりやすい、って言われてたのも分かってた。

「シエルって何でも出来るのかよ…」
「ロイド、はぐらかされただけだって」
「そんなことねーよ。なぁコレット」
〈うん。間違いでもないよね〜〉

笑いながら頷いたコレット。その行動はロイドたちにも伝わりやすいように、だろう。その様子を見ながら、ロイドやジーニアスはほっとしていたみたいで。強がるところがどうにもあるらしい。前々から思ってたが、女ってめんどくさい。明らかに強がってんのが分かるのに、それを隠そうとしている。



「…世界再生されたら、どうしようか」

ジーニアスの呟きが響く。あいつらは最期にコレットがどうなるのかは、知らないんだ。そのせいか、コレットは自分の服を強く握っていた。うーん、とか唸り、ロイドは腕を組み首を傾げながら、救いの塔を見上げていた。


「つーか俺もジーニアスも村を追放されてんだよな〜行く当てねぇじゃん」
「…そうだったね」

人間牧場と関わっていたせいで、追放された、ってリフィルから聞いた。あいつらは悪いことは、していない。大人はいつだって自分の地位を守るのに必死で、誰かを守ることを忘れている。それじゃあ、子供が可哀想だ。


〈ねぇ、シエルの世界にみんなで行きたいな!行ってみたいっ〉
「は?俺の世界に?」
「ナイスアイディアだぜコレット!」

呆然気味に呟いた言葉はロイドに聞こえたらしい。そんなロイドの態度に、嬉しそうにコレットは笑っていた。いやいや、俺の世界ってオールドラントだよな。それ以外ないだろ…。いや、でも確実に帰ったら俺は殺される(ジェイドとかアッシュとかジェイドとかに!←) え、っと、こいつらにそんな姿を見せたくないのが心境だったりする。


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