世界再生

「みんな、聞いてくれないかな?」


しいなが、立ち上がりながらそう呟いた。夕飯を食べ終えたあとに、視線がしいなに向く。封印解放後、コレットはいつもみたいに天使疾患を起こした。今度は、声が出なくなったようで。そんな中、笑っていたコレットがあの頃のあの馬鹿と重なる。そんなはず、ないのに。月明かりが綺麗な夜だった。その雰囲気は、どことなく暗い。



「どうしたんだ、急に」
「どうしてあたしが神子の命を狙っていたのか、話しておきたいんだよ」

不思議そうに、ただ少しシリアスな空気に戸惑うロイドに対して、しいなは困ったように笑っていた。最早しいなはコレットを殺すつもりは、恐らくないだろう。シルヴァラントが本当に再生されるとなれば、話は別なのだが。

「…聞きましょう。この世界には存在しない、あなたの国のことを」
「知ってたのか!?」
「あれだけ言ってたら分かるだろ…」
「う、うるさいよシエル!!」


抜けているんだかよく分からない。小さなシエルの声を聞きとったらしいしいなはシエルを睨んでいた。その様子を見ていたリフィルは密かにため息をついた。

「いいえ。でも貴方が言ったのよ。シルヴァラントは救われるって、それなら貴方はシルヴァラントの人間ではないってことでしょう」
「その通りさ、あたしの国は此処にはない。このシルヴァラントには」

その言葉に、やはり何人かは首を傾げた。そして、ついでにこの状況でロイドは私の予想を裏切りはしなかった。

「姉さんたちの世界のことか?」

もちろん、その台詞でロイドはシエルに殴られていたのだが。深いくらいにため息をついた私。(クラトスが予想以上に反応が薄かったのも理由)


「私たちとは違うわよ。私たちの世界は、再生の神子も存在しないもの」
「セレネたちと別の世界?そんなの、あるの?」
「あるんだよ」

きっぱりと言い切ったしいな。ただその表情は幾分暗いものだった。表情が暗くなった理由を知る者は少ないけれど。


「あたしの国は"テセアラ"…そう呼ばれてる」
「テセアラ?テセアラって月のこと?」

月?と首を傾げる。リフィルが、"テセアラ"とは月の別称だと教えてくれた。ただそれを否定するように、しいなは首を振った。
しいなが言うには、テセアラは確かに地上にある。そして、シルヴァラントとは光と影のように寄り添い合うもう1つの世界。それがテセアラだという。2つの世界は常に隣合って存在している。ただ見えないだけで。学者たち曰く空間がずれてるんだ、と。

「とにかく2つの世界は見ることも触れることも出来ないけど、確かにすぐ隣に存在して干渉し合ってるってわけさ」


私がレネゲードに聞いた話そのものだった。ただ、1つだけ、しいなも知らないのだろう。この歪み方は、人為的に創られたものだ、ということを。


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