契約

「ね、ねぇ、本当に契約するのかい?」
「「契約契約〜」」


無理矢理祭壇へと押しやられたしいなは、困ったように振り返る。ただ、そこには楽しそうに笑うコレットとロイドしかいない。頼みの綱のリフィルは暴走中なので、止められる人はいない。しいなは強がっているんだと思う。表情が少しこわばっていたのが分かったから。

「っ、どうなっても知らないからね!」

しいながロイドに励まされながら、ウンディーネを呼び出す。第四音素にも近い感覚の後に、ウンディーネが姿を表した。私が契約した時、陛下お気に入りの抜け道の先の庭で戦ったのを思い出してしまった。


「契約の資格を持つ者よ。私はミトスとの契約に縛られる者。貴方は何者ですか?」

ミトス、という名前にロイドたちは何やら話をしていた。この世界では、有名らしいけれど私やシエル、しいなは聞かずに、ウンディーネへと耳を傾けた。


「我はしいな。ウンディーネとの契約を望む者!」
「……このままでは、出来ません」

静かに首を振ったウンディーネにギョッとして、誰もが目を見開いた。この世界の精霊は、同時に多数の契約を結ぶことは出来ないらしい。音素の意識集合体は、その点便利だ。ただ、ローレライだけは変わり種なんだろうけれど。幸いにもクラトスが詳しく、その助言に助けられた。しばらく無言だったウンディーネも、頷いた。


「新たな誓いを立てるために、試練を行います。武器を取りなさい」
「うえ、やっぱり戦うのかよ…」

先程の封印の守護者との戦いの疲労があるみたいで、ロイドは少し疲れたように剣を抜いた。それでもやる気なのは契約というものに興味があるから、なのだろう。シエルも先程は戦闘にあまり関与しなかったので、今度は前線に立つみたいでローレライの剣を握った。が、私もシエルもふとウンディーネと目が合った。


「聖なる焔と再来、私は、貴方たちとは戦えません」
「…つまり、私たちが戦闘に関与すると契約が出来ない、と?それはどういうことなのかしら」

私の問いにウンディーネはシエルを見た。が、見ただけで何も言わなかった。それは彼が何かを知っているということなのだろう。まぁ彼が話すとは到底思ってもいないのだけれど。


「全ては、繋がっています。しかし、七番目だけは特殊なのです」

(つまり、俺がローレライの同位体でレプリカだから無理ってことか?)
(レプリカは関係ないわ。ただ、七番目は特殊だからそれに深く関わる私やルークは契約に関与出来ない)
(…………かい摘むと、)
(…ローレライに関わってるから無理、ということ)

相変わらず頭が弱いのは変わらないらしい。頭が弱い、というよりは理解力が乏しい…というのか。しかし、どこがどうこの世界と向こうが繋がっているのかしら。仕組みが全く見えてこない。今はそんなことはいいけれど。と、そんなわけで、と私とシエルは壁際まで退がる。その様子を見ていたロイドは、驚いたように声をあげた。


「なんだよ二人とも!大事な戦力なのによー」
「仕方ないよ、ロイド。ね、頑張ろ!」
「怪我すんなよ」

ロイドのコレットのやりとりを見ながら、苦笑いをする。リフィルはどことなく理解したのか(恐らく異世界の人間だから、という解釈の仕方だろうけれど)ただ、クラトスからの鋭い視線は感じていた。私もシエルも、気付かないふりをして。


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