過去との遭遇
夜になってからルインに着いたため、教会で鍵を借りるのは翌朝になってから、ということで久々にルインで一泊を出来た、その次の日だった。全員で教会に行く必要もないだろう、ということになり、コレットとリフィル、それからクラトスが教会へと向かった。
その間、当然のようにロイドとジーニアスの子守りを任されてしまった。とりあえず大陸横断という暴挙のせいで、ほぼ皆無に近付いたアイテムの補給をしていた中だった。噴水のある広場へと足を踏み入れた時、持っていた袋を地面へと前触れもなく落としていた。
「姉さん?どうしたんだ?」
袋に入っていたライフボトルが転がっていくのが見えた。それをジーニアスが拾いながら、ロイドと共に私に視線を向けてきた。最も、その声はどこか遠くに感じていた。
え、ちょっと待って。 何これ。
最初に思ったのがそれで、次に浮かべたのが引きつった笑みだった。そして、音もなく右手に音叉を握る。それに焦ったのはロイドとジーニアスだ。あれ?ちょっと、セレネ!?何してんの!なんて声を聞きながら、噴水の前で子供と戯れていた、ソイツが振り返った。
その不審な気配に気付いたのだろう。そいつが振り返る。しかし、私の足元には既に青い譜陣が浮かんでいた。譜陣の大きさと複雑さは、その術がどれだけ高位なものかを表すものだ。譜陣の大きさと、複雑な構図にジーニアスはもちろん、ロイドも引き攣った笑みを浮かべて、一歩二歩と下がる。
そして、
「…えぇええぇえぇ!?なんで?!なんでセレネが此処に…って、あれ?あの、その足元のなに?いやいや、ちょっと待って!落ち着いて話し合おうぜ!いやほんとマジで待ってえぇええぇぇえ!!」 「……セイントバブル」
ぎゃぁああぁぁ!なんていう悲鳴がルインの中心にある噴水の広場から広がっていた。水属性の譜術を使ったのは、それなりに優しさのつもりだったのだけれど。あからさまに動揺しているそいつは水柱の向こうへと消えた。
「姉さん…怒らせないようにしよう…」 「僕も、気をつけよう…」
ロイドとジーニアスの呟きが聞えた。
しばらくして消え去った水柱の向こうから、走ってこちらに向かってきた。それを見ながら、こちらに突っ走ってくるその頭に向かって、音叉をバッドのように振り回す。当然、それを頭を下げて避けた。が、頭を下げた瞬間にその鳩尾に向かって蹴りを一発入れる。まともに入ったのか、僅かによろけて、少しだけ咽ていた。
「俺、何か悪いことしましたか…?」 「それはね、2年も顔を見せなければこういう扱いになるわよ。ていうかルーク、何してんだテメェこんなところで」
口調変わってる…!というジーニアスの声が聞えた。私の目の前にいるのは、何故か。髪の色が綺麗な青に変わっているルークだった。相変わらず、ヒヨコ髪がそのままで、顔つきも変わっていなかったからすぐに分かった。
「それ俺の台詞なんだけど!?」 「え?何?何か言ったかしら。こっちの質問にも答えてないのに、何か私に聞いたかしら」 「のあぁあぁ!すみませんごめんなさいお願いだからそのブーツの踵で俺の足を踏むな!」
あれ、なにこれ。バイオレンス?と呟いて、顔を青くしていたジーニアスとロイドに罪はない。
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