陽が沈む前に
「………ねぇ、何で貴方たちそんなに元気なのかしら」
リフィルの我が侭(あれは我が侭以外の何物でもないわ)で、大陸横断という暴挙に出た私たち。目的地、ハイマが肉眼で確認できるほどに近付くのに、かなりの日数が掛ってしまった。さすがに野営という状況は理解していても、それは疲れてくる。普通は。
「なんで姉さんはそんなに元気ねーんだよ、逆に」 「疲れるからよ」 「楽しいよ〜?ね、ロイド!」 「もうすぐでハイマだしね!!」
…駄目ね、この子たちに何を言っても通じないわ。目の前にハイマが見えたところでクラトスがそれを告げた。それを聞いたロイドとコレット、それにジーニアスが私の腕を引っ張り始めた。疲れたという言葉は、この子たちには通用しないらしい。
「セレネっ!早く行こうよ〜!」 「姉さん、なにボサッとしてんだよー!」 「ロイドもコレットも引っ張ったらセレネが歩けないでしょ!」
3人から引っ張られて、もうどうにでもなれ、という感じ。リフィルもクラトスも可哀想にとでも言うような表情をしていた。
「…離してくれないかしら」
そう言ってみたけれど、離すつもりはないらしい。深い深いため息と同時に、一番高い空に見える太陽に呟いた。あぁ、もうお昼か。そういえば、お腹が減ったかもしれない。なんて、今までの大陸横断の様子を消すかのように逃避を始めた。
ようやく、と言っても間違いではないだろう。ハイマの町に入ったところで、疲れたような、まぁ正確にはかなり疲れていたんだけれど。ため息を一つ零した。
「……長かったわね」 「長かったな」
ようやく到着したハイマを前に、すっかり疲れてしまった。高い位置にある太陽が邪魔で仕方がない。ちょうど、クラトスとリフィルの間にいた私はそのまま台詞を吐きながらリフィルを見た。それに困ったように視線をさ迷わせていたけれど、リフィルは。そんな私たちとは対照的にお子様組は楽しそう。真っ先にハイマの町へと走り出した。
「ねぇロイド、あれって…」
少し前にいたコレットからそんな声が聞こえた。何かあったのか、と顔を見合わせて。「待て」と言う暇もなくロイドは走り出していたけれど。…学習能力がないと言うか、なんというか…。それにジーニアスとコレットも続いて行ってしまって。私たちもそんな3人を追う形でハイマへと入った。
「またお前たちか!」
そんな声と共に見えたのは、私にとっては顔馴染みでオサ山道で私たちを襲って来た人。思わず「げ、」なんて漏らしてしまったが、これ幸いと誰も聞いていなかったみたい。前でロイドが私と同じ表情をしていたけれど。
「また、って…そりゃこっちの台詞だよ」
呆れたロイドの言葉に、彼女は焦ったように武器を構えていた。…此処、町中なんだけれど。まさか此処で殺るのかしら。
「…暗殺には向いてないわよ、彼女」 「えぇ、私もそれは思うわよ」
呟きを聞かれていたのか、リフィルから同感の意が返ってきた。本当に暗殺する気があるのなら、宿に忍び込んだ方が早いと思うのだけれど…。
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