久しぶりの影

翌日。砂漠から少しはずれ、山道を上っていた。前をロイドとジーニアス、それにコレットが歩いている。オサ山道。海に出る為には内陸部から山道を登り海岸線へ出るしか方法はない。最も、このご時世に船を出してくれるところがなければ意味がないけれど。

「もう少し先に港町がある。そこで船を出して貰えば、パルマコスタへ向かえるな」

クラトスの言葉に、リフィルが僅かに反応した。それを私とクラトスは何事か、と振り返り不思議そうな視線で見る。幾分か顔色が青いような気がする。あぁこれも嫌な予感だ、と思った。

「わ、私は船よりも内陸に沿ってハイマを通る道の方が安全だと思うわ」
「船が怖いのね」
「船が怖いのか」

リフィルの提案に声を揃えて(わざとではないけれど)ため息をついた。図星なのか、リフィルは何も言わなかったけれど。空を見上げれば澄みきったような青い空。眩しい、陽射しを遮るように手をかざした。そして、呆れるように私とクラトスはほぼ同時に声を発した。

「…歩きか」
「歩きね」

心配だ、と。前方を行くロイドたちと船に乗るのを固くなに嫌と言うリフィルを思い、深いため息をついた。結局、折れたのは私とクラトスだったりする。



「とまれ、」なんて声が聞こえた。徒歩ルートを洗っていたところで、ロイドたちの声とは違う声が聞こえて、顔をあげた。ロイドたちの目の前に女の人がいた。3人は首を傾げるようにその人を見ていた。見覚えのある姿だった。随分会っていないような気がするけれど、見間違えるはずがない。

見間違いでなかったとしても、どうして彼女が此処にいるのだろうか。…ユアンがテセアラの方から手を打った、なんていう考えも考えられなくない。色々と手を打って、“向こう側”にバレないのかと心配になってきてしまった。


目の前ではコレットが「友達?」とロイドに尋ねていたが、そんなはずはないだろう。苦笑いをしながらその状況を見ていた。手を出すまでもないだろうな、と思っていたからなのだけれど。どこか抜けているところがあるし。

「……この中にマナの神子はいるか?」

そんな問掛けにリフィルとクラトスは反応した。けれど様子見をしようと思ったのか、動くことはなかった。コレットの近くにロイドがいたのも理由に入るかもしれないけれど。

「あ、それ私です〜」

呑気に手を挙げて返事をしたコレットにジーニアスが呆れている。彼女が一体何をしようとしているのか、なんとなく察しがついて。しかし、それにしても緊張感のないコレットの様子にもため息をついてしまった。そして、正面真っ向から挑んでくる暗殺者など聞いたことがない、という視線を彼女に向けながらだ。


「(あんたに罪はないけど…)覚悟!!」

小さな呟きが聞こえた気がした。彼女は何枚かの紙を手に取り、コレットめがけて走った。慌てたようにロイドが剣を抜こうとしたけれど、それよりも彼女が早い。慌てたようにチャクラムを取り出そうとしたコレットは、何かに跌いて後ろに座る形で転んだ。その拍子に、か。ガゴンっという古くさい音が響いて、



「………あ、」

ジーニアスの小さな呟きだったが、辺りに響いた。。コレットが跌いたものは、どうやら作業用通路の扉を開けるレバーか何かだったのだろう。そして、彼女がちょうどその扉の上にいたのだ。そして彼女は、見事下に落下していった。

だから間抜けって言ったのに。


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