確かにそこに存在していた。

「…人間牧場、か」
「どうしたんだ、シエル」


ショコラ(っていうのは雑貨屋にいた女の子らしい)が人間牧場へ連れて行かれた。そんな話を聞いて、しいなを含む子供たちは、すぐに行って助けよう、と思い立ったらしい。ただ本当にそうなのか、と疑ったりしている私たちなんだけれど。どう考えてもショコラっていう子をダシに使って。私たち(よりもロイドかしら)をおびき出そうとしているようにしか思えない。一番早い材料は、私たちの顔見知りだから。
パルマコスタの人間牧場へ行く途中でふとシエルが立ち止まった。一緒になって前を歩いていたロイドも同じように立ち止まる。リフィルが怪訝そうになるのを見て、隣にいたクラトスが私を見た(見下ろした…?)その視線にただ小さく笑うだけ(多分彼は知っているだろうから)


「なぁ、“敵”って誰のことだと思う?」
「ディザイアンみたいな人を苦しめる人たちのことじゃないの?」

シエルの突然の質問にジーニアスが答えた。それはロイドが固まっている間に、だ。(多分気付いてる)(恐らく、遠くない未来に私が取る行動を)

「結局あんたは何が言いたいのさ」

しいなのそんな質問に、コレットが少し不安そうに頷いていた。シエルはそれに答えずに、ロイドを見ていた。その視線に、一瞬ロイドが怯えたように見えたけれど(殺気向けたりしないでよ、まったく…)



「ロイドは?」
「……俺、は…」

ちらっとロイドはコレットを見ていた。それに、コレット自身は気付いていないだろうけれど。もう一度、「俺は、」なんて呟いたあと。いつもと変わらないような真っ直ぐな視線で少しだけいつもより冷たいようなシエルの視線を受け止めながら、真っ直ぐ見ていた。今度はシエルが視線を逸らす番かしら?

「俺の、大切な人を傷つける奴は、みんな“敵”だ!」


その答えにシエルが止まった(結局、貴方の負けだったみたいよ)(その答え、同じなんでしょうけれど)一瞬広がった沈黙に、堪えきれずに私が笑った。その瞬間に怪訝そうな視線がロイドからコレットからも飛んできて、

「い、今いい話してんだけど姉さん!」
「悪かったわね。でも、貴方の負けみたいよ?」


少し、面白くて涙目になった。それを見て、失笑を浮かべるシエルとを交互に見ていたロイドが私たちを指差しながら思いっきり叫んでいた(居所知られたらどうするつもりなのかしら)

「なっ…2人して試したな!!?」
「だ、だから悪いって…。ただ忘れないで欲しいんだ」
「何を、かしら」


リフィルが絞るように声を出した。その声にシエルが振り返って笑う。またその視線は“子供たち”に注がれるわけで(そこにしいなが入っていたのは、言わないでおいてあげよう)


「その“敵”って奴にも大切な人がいるってこと敵って奴を殺すってことは、命を背負うってこと誰かを犠牲にして生きるってことはさ、幸せにならなきゃ駄目なんだよ」


命を背負うとまでは言わないみたいだけれどね。その言葉誰の受け売りなのかしら(恐らくあの親友である音機関マニアの受け売り)そう思っていたら、昔、俺も言われたことなんだけど、なんて誤魔化すようにそう笑っていた。

(悪いけど、その言葉そっくりそのまま、貴方に返すわよ)
また笑いながら歩き出したシエル。その彼の腕に絡みつくようにジーニアスとコレットがいて、(あれでどうやって剣を抜けるのかしらね、シエルってば)嫉妬しているのか構ってもらえなくて不機嫌なのか少し仏教面のロイドとしいなが続いていた。その背中を見ながら、


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