言葉の意味
パルマコスタでのひと騒動を終えてから。あれよ、あの再生の書を見せてもらうために必要なスピリチュア像を貰いに、救いの小屋へ来ていた私たち。事情を説明すれば、祭司長は少し、苦い顔をしていた。それもそうだろう。あんなもの、ほいほいと人へ渡すなんて無理だろうから。
「向こうなら私の名前で一発なのに」 「キムラスカなら俺の名前で一発だな」 「ダアトならイオンかしら」 「セレネでもいけるだろ」
こそこそとクラトスの後ろでそんな会話。ちなみに向こう、とは勿論テセアラのこと。最もあっちなら私じゃなく、アホ神子で一発だろうけれど。ふと、思い立ったことにシエルを見た。
「「マルクトならジェイドで一発」」
同じことを考えていたらしい。そこはあえて陛下の名前じゃないのよ。ジェイドで十分。そんなくだらない会話をしている間に、こちらで一番の影響力を持つコレットが名乗り、頼んだ途端に何故か祭司長の傍にいた祭司が慌て出したのが分かった。何かあるな、と思った時には祭司が物凄い勢いで頭を下げてきた。
「申し訳ございません!この導師スピリチュア像は私が用意した偽物でございます!!」 「ど、どういうことだ?!」
祭司長も知らなかったのか、祭司は謝り続けていた。そんな祭司に祭司長は少し動揺しながら、理由を話せと促していた。
「実は…昨年の旅業でスピリチュア像が紛失してしまったのです」 「なんで旅業に像を持ってくんだ…」
呆れたようなロイドに頷きながらため息をついた。聞けば偽物はダイクが作ったものらしい。本物のスピリチュア像にはダイヤモンドが使われているらしく、その本物はソダ島の間欠泉に落としてしまったらしい。 呆れているうちに、シエルに隣から肩を叩かれた。なに?と振り返れば、
「セレネ、旅業ってなんだ?」
なんて言われた。あぁ、こんなこと「サーカスってなんだ」って聞かれた以来よ。(大体なんでサーカスを知らなかったんだこいつ)今度はこちらの世界の言葉だから呆れはしなかったが(間欠泉を聞いてくるかと思ったから)
「碑石巡礼やったわよね?あんな感じ」 「……あぁ、なるほど」
確か、前に一度仲間に填められて、彼と一緒に碑石巡礼をすることになったことがある(彼がしたい、って言ったんだけれど)あの時ばかりは無駄に教団の歴史を覚えていてよかった!と思った記憶がある。
「よく出来ているけれど…この模造品であの老人を誤魔化せるとは思えないわね」 「やっぱ偽物じゃダメだよな〜」
リフィルとロイドの言葉に、思わずシエルを見た(心配だったから、)自分でも分かっているのだろう。表情が強張っていた。私の視線に気付いて、ぎこちなく笑っていた。
「だいじょうぶ」
小さく呟かれた言葉に、思わず眉毛を潜めた。そんな私を見て、アッシュみてーと笑った。それにイラッときて、足を思いっきり踏んでやった。何が大丈夫だ馬鹿。嫌いな言葉ばかり並べられて、平気なわけあるか。その言葉が、今まで自分を傷つけてきたモノばかりなら余計にそうだ。この無理しすぎる馬鹿を一発殴ってやろうか。
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