陽が昇る場所

照り付ける太陽によって、焼かれたように熱い砂地。陽射しを避ける為の何かがあるわけではなく。ただ広い砂漠にある忘れ去られたような小さな遺跡。朝一からだいぶ時間は経ってしまった。そのせいか、最初よりも太陽が高く、熱く感じるのは気のせいではないだろう。その中、


「素晴らしい!!!」

なんて、いきなり豹変したリフィルに、全員が呆れたようなため息をついた。火の封印。旧トリエット跡に第一の封印があるという説明を受けて、砂漠越えのために朝早くに出発した。それでも、さすが砂漠というべきなのか、すぐに気温は上がっていった。

そんな中、1人子供のようにはしゃぎ始めたリフィルに、もはやため息しか出なかった。暑いのが苦手だと言わなかったかしら、とまた一つため息をついた。聞えていないだろうけれど。

「見ろ、この扉を!周りの岩とは明らかに性質が違う!くくくく……思った通りだ!これは古代大戦時の魔術障壁として開発されたカーボネイトだ!!あぁ…このすべらかな肌触り…見事だ」

扉に頬ずりを始めたリフィルに、さすがの私も引いてしまった。見たことがないリフィルの様子に、クラトスと、それを知らなかったらしいロイドも結構引いていた。コレットだけがにこにこしていたが。

「あぁ………隠してたのに…」

クラトスとロイドがリフィルを指差しながらジーニアスへと視線を移せば、頭を抱えて唸っているジーニアスの姿に小さく笑ってしまった。未だに扉を見ながらぶつぶつと呟くリフィル。楽しそうだなぁ、とふと思った。まぁそんなことしている余裕もないはずだけれど。


視界の隅に扉のすぐ側、何か文字の書いてある石板を見つけて眺めていた。その様子を見ていたらしいロイドが若干距離を開けながら、おずおずと口を開いた。

「ま、まさか姉さんもそういうのに興味が…?!」

私の姿に驚いたようなロイドの視線。呆れたように、私は振り返りため息をついた。

「違うわよ。コレット、こっちに来てくれるかしら」

手招きでコレットを呼べば、笑顔で駆け寄ってきた。石版を指差しながら、手を当ててみて、なんてコレットに向かって微笑みかける。すると、驚いたようにコレットとリフィル…それにクラトスまでが私に視線を向けた。どうしたのか、と首を傾げたらコレットから感嘆の声が聞えた。



「セレネ、この文字が読めるの?!すごーい!」

一体何の話をしているのか、分からずに首を傾げた。どうやらこの文字は特殊な文字らしく、異世界から来た私(…とはクラトスは知らないけれど)には読めないと思ったのだろう。聞けば、それは天使言語というものらしいが、私からしてみれば古代イスパニア語と文法などが似ていたから、すぐに分かっただけだ。

あぁ、そういえばこっちに来てからも文字は全く同じだったから読めた。古代文字という観点で天使言語と古代イスパニア語が似ていてもおかしくはない、かもしれない。なんて自己完結して曖昧に笑った。説明出来るはずもなくて。

「まぁ…色々とあるのよ」

多分、なんて小さく呟いて、何か含みのある私の言葉に何処か納得したようなリフィル。そして、考え込むようなクラトスの姿が目に映ったが、ま、いまはいいでしょう。

とにかく、とコレットを促せば思い出したように石板に触れたコレット。すると、先程までリフィルが気にかけていた扉が音を立てて開いた。どうやら地下に続いているらしく。

「開きました!!……凄い、なんだか私、本当に神子みたいです」

振り返ったコレットは、シルヴァラントの人々が聞いたら驚きそうなことを笑顔で言って。神子でしょ?なんて呆れたようなジーニアスの声にコレットは「そうだった」と笑顔でそう言って。またジーニアスにため息をつかれていた。


いまだ入口に興味津津なリフィルを引きずりつつ、ようやく中へと足を進めて行った。


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