必然じゃなく奇跡じゃなくまして運命でもなくて


ふわりふわりとゆれおちている。それをひっしにつかもうとしてもどうしてもつかめない。
まるで、だれかさんみたいに。


「…なぁ、何してんだよ」
「ん〜わかんない」

笑いながら木陰に座っていたルークに近付く。その私の笑顔に、少し苦笑いをしている。うふふーなんて笑いながら、隣に腰を下ろす。ふわりふわりと舞い落ちるのは、見慣れない桃色の花。掴みかけたそれは、ルークのすぐ側に落ちた


「届かない」
「はは、なにが?」

何が面白かったのか分からないが、ルークが笑ってた。青い青い空の中に違和感さえ感じられる桃色の花が浮かんでいた。壁紙なのではないのか、と思えるくらいの違和感を感じる。


「なににって?幸せ?」
「幸せって、なんだよ」

幸せってなんだろうな。なんだろーね、そんなことを言いながら笑う。所詮、幸せなんか、定義つけられないんだろーけどさ。幸せってなに。幸せなんか未来がないのにあるのかな。未来がないのに、出会ったのかな。出会いの意味は?出会ったことは、運命?偶然?必然?そんなもので未来も幸せも決めないでよ。未来がないのも運命?いやだな、そんなの。勝手に言ってろ。


「未来もないし
明日があるのか分からない
昨日も消えるかもしれない」
じゃあ、なにが幸せ?」

なんでそんなに暗いんだろう。そう思って笑うけど、やっぱりルークも笑ってる。泣いたってしょうがないもんね。むしろ泣けない?ヤだなぁ、泣きたいのはルークだもんね。泣けないよ、私は。
ようやく掴んだ桃色の花びら。なんて名前だろう、この、桃色の花びらは。名前も知らない。一本だけ、細々と佇むこの木の名前。ジェイドに聞いたら分かるかな。まぁ、知らなくても、いいか。






「幸せなのは、今かな」



「未来は要らないよ」



「だって未来がないのに」



「昨日だって、あるのか分からないのにさ」



「だから、今があるだけでいい」


そう言って、笑えばルークにぎゅーっと抱き締められた。滅多にやらないその行為に、少しびっくりした。こういうの、恥ずかしがってやらないのに。それに立て続け、軽い音を立てた頬に、コツンっと額をくっつけて笑う。

「未来、ないしな」
「昨日ってあったっけ」
「さーな。あ、でも昨日のえびまよは美味かった」
「うふふー昨日あったね」
「…あ、そーだな」

昨日があっても、未来がなければ意味ないじゃん。今この瞬間が消えなきゃいいよ。多分、そのうち消えるんだろーけどさ。
不意に、ルークは立ち上がって、手を差し出した。あぁ、もう終わりか。そう思いながらそれを笑いながら、取って立ち上がる。


「みんな待ってるぜ」
「そーだといいね」
「うわ、なんか悲しいなそれ」
「いなかったら逃げよっか」
「…うん、出来たらいいのにな」

「無理かな」
「無理だよ」






必然じゃなく
奇跡じゃなくまして
運命でもなくて


出会ったのも、これからも、全部全部、自分たちで決めたの。

これから、がない未来も。


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