やむごとなし

「なんです、これ」
「ちゃんと全部飲めよ。良薬は口に苦しって言うだろ。俺の調合した薬だ、ありがたく飲め」

かなりマズいはずである。
こいつ、今回は飲んだが、次回からは何か言い訳でもして飲まなくなるに違いない。

飲むのを一旦やめようとするのを抑え込み、無理矢理飲ませる。

少々緩和のために苦味を抑えるものも加えたが、足りなかったか。悪いことをした。


「…う」
「これでも飲め」

サッと手に取り含ませたのは珊瑚の最近お気に入りの甘ったるい冷やし飴である。

「う…だめです。それでもマイルドなお薬の味がいたします…」
「喜べ。ちゃんと飲めたじゃねえか」

…と、突如背後に感じたのは鬼鮫の気配である。


「サソリさんは珊瑚さんに甘すぎですよ…確か私が敵の毒で寝込んで助けを求めてた時は
水飲んどきゃ治る。
なんて仰っていたのに」


面倒くさいのが入ってきやがった。次回からは部屋で飲ませねばならん。

「サソリさん、私見るなり何でそんな変な顔するんです」
「俺は珊瑚に甘いんじゃねえ。コイツに今死なれたら、俺が困るからだ」

苦し紛れの言い訳をそれなりのようにして返した。
けほけほと咳き込む小さな身体を抱えて背中を摩る。

「その体俺様のものだと思って労れ」
「サソリ、次はお薬の量減らして下さいね…」
「お前の頑張り次第でな」


(こんな丸くなったサソリさん、今までみたことないんですが…)




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