曽芭で幼稚園パロ


【the Kindergarten――5】


月日は流れ、曽良は18歳ではまだ子供だという事実に気付いた。
しかし、芭蕉への想いは変わらない。
会いに行きたいけれど、まだ芭蕉を守れるほどには大人ではなかった。
どうしたらいいだろう。
好きだ。芭蕉が。
刷り込みなんかじゃなく、心から。
気付くと幼少を過ごした幼稚園の前に着いていた。

「…僕も大概だな」

考えなくても、想いはただ一つ。
芭蕉に会いたい。
芭蕉が好きだ。
芭蕉を抱き締めてみたい。
ただ抱き締められていたあの頃より、曽良はずっと大きくなった。

「あれ?お迎えかな?」

懐かしい声が鼓膜を刺激する。
顔を向けると、そこには芭蕉がいた。
あの頃より老けてはいるけれど、芭蕉は変わっていなかった。
思わず、曽良はじっと見つめてしまった。
気付かれないくらい、自分は大人になったのだろうか。
それとも、その他大勢の園児と同じだったのだろうか。
気付いてほしかった。芭蕉に。
自分が、河合曽良だと。

「もしかして…曽良君?」

こてんと首を傾げるその仕草は、曽良が幼かった日から変わらない。
緩みそうになる表情を抑えると、曽良は小さく頷いた。
この人は変わらない。それが嬉しかった。

「18になったら貴方を迎えにくると言ったのを、覚えてますか?」
「えっ…」

芭蕉がぼっと顔を赤く染める。
曽良は少し驚いた。
何しろ、こんな顔をされるなんて思わなかったのだ。
意識してもらえたようで、嬉しかった。

「18ではまだ見込みが甘かったんで、あと10年待ってください」
「え、へ?あの…」
「返事は?」
「は、はい…」

そんな芭蕉の返事に満足すると、曽良は口元を僅かに緩めて笑った。
また、ここから始まる。
ちら、と幼稚園を見てから、曽良は芭蕉の手を引いて抱き締めた。


おわり


11.01.08〜

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