宮牧で主従パロっぽいもの


【似て非なる者――5】


月日が流れ、司郎も慶も大人になった。
しかし、心は幼い頃から変わらない。
相変わらず司郎は慶に囚われたままであるし、慶は牧野に捕らわれたままだ。

「…宮田さん」

呼ばれ、振り向く。
そこには主である慶が泣き出しそうな顔で司郎を見ていた。
慶のこの表情は、何も珍しいものではない。
司郎は幼い頃からよく知っている。
人前ではもうこんな顔をしなくなったけれど、司郎の前では変わらない。

「どうしました?」
「結婚、なさるんですか?」

ああ、と司郎は思った。
見合い話を勧められていたのは確かだ。
まさかそんな話が慶の耳にまで入っているとは思わなかった。
慶は今や牧野の当主だ。
誰かが言わなくても、いずれ分かったことなのだけれど。

「見合いを奨められただけです」
「お見合い…」
「貴方がいるのに、結婚なんかしませんよ。
必要がない」

思うように言葉にすると、慶の表情がぱっと明るくなる。
本当に分かりやすい。
司郎が慶を手放す気がないのと同じくらい、慶も司郎に依存したらいい。
司郎はいつもそう思っている。

「しませんよ、結婚なんて。
俺は貴方のものだ。
他の何かに囚われたりしません」
「宮田さん…」
「この先、貴方が結婚したとしても、それは変わりません」

変わらないのではなく、変われない。
小さい頃からずっとそうだった。
司郎にとって、慶は特別で他と比べることなんかできない。

「怖いんです。
私は…牧野ではなく、私を見てくれる人なんていなくなるんじゃないか、って」
「…慶」
「いつだってあなただけだった。
私を私として見るのは。
お願いですから、離れていかないで…」

分かってますよ、と言って司郎は笑った。
司郎は慶のものである。
慶は牧野のものだった。
今はもう、慶は司郎のものだ。
似通っていて、その実、まったく似ていない慶が、司郎は堪らなく愛しく思えた。


おわり


11.01.08〜

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