「ねえ、風丸君」 「…ん?どうした?」 「僕は風丸君が好きだよ」 「!!?」 「君の綺麗な髪も、優しい目も、少し強情なところも」 「……な…っ、なに」 「君の僕を求める時の少し掠れたこ」 「なんなんだ!急に!!」 もうすっかり馴染んだヒロトの部屋。ベッドに背を預けて愛読しているサッカー雑誌を読んでいると、突然呼ばれ何気なく視線を向けた。 すると彼はベッドの定位置からなぜか四つん這いで近寄ってきた。どこか雰囲気もいつもと少し違うから不思議に思っていると、広角を少し上げながら発せられた言葉。 そのあまりの唐突さと、時間に合わない内容に嬉しさとか照れなんて感じている余裕は無かった。 「何って?」 「だって、あまりに突然すぎるだろ!?」 「どうして?僕はいつだって風丸君のことが好きなのに?」 「…だ、から!いつもは、言わないだろ、そんなこと」 「………」 「だから、突然そんなストレートに言われたら、……?」 さも当然のように緩く首を傾げるヒロトに頬の熱を誤魔化す様に少し低めの声で非難したら、彼は顔を俯かせてしまった。 長めの髪は見事に彼の顔を覆ってしまい、表情が窺えない。 そしてすっかり黙ってしまったヒロトを見て、俺はてっきり落ち込ませてしまったかと慰める様に優しい声音に変えたのだが…様子がおかしい。 肩が、震えてる…? 「……っ、」 「…ヒロト?」 「…く、………」 「ヒロト?」 「もう、だめ……!!!あーもう可愛いなぁ風丸君は!」 「は?」 「頬、赤いよ」 「!!!」 「やばい…それ、ハマりそう……くっ、ははは!」 「…………」 それから暫くヒロトは腹を抱えて笑っていた。 俺はと言えば、恥ずかしさとムカつきとで更に暑くなった頬で部屋を出る訳にも行かず、ひたすら彼の楽しそうな笑い声を聞き耐えるしか無かった。 ――――忘れてた、ヒロトはこういう奴だった。 |