「……君って、サッカーやるの?」 正直言って、フィディオに対する印象は最悪だった。 会って間もなくの言葉がこれだったからだ。 確かに外見は綺麗と称されることは多いし身長はあれどスポーツとイコールするかというとインドア見られることも自覚してはいるが、それにしても彼の不躾な言い方にとても不快に感じたのを今でも覚えている。 だが印象とは接していく内に変わるもので、実際に試合をしてみるとフィディオは確かに並外れたセンスもあったし選手として見ても華やかで強く、何よりカリスマ性があった。 チームメイト達は皆彼を信頼し、良い意味でチームを任せているようだった。 悪い印象は未だ変わらないながらも中々やるじゃないかと思っていると、彼はどこか楽しそうに私に近付いてきて言った。 「驚いたよ、君は強いんだね!さっきはごめん…見た目だけで判断してしまって。良い試合が出来て楽しかったよ!」 私は彼の嫌みのない言葉に驚いた。 その後も技だったり試合についての話をしてきて適度に返してはいたが、頭の中では彼の心からの笑みばかりが脳内でちらついていた。 それから程なくして、彼はイタリア人らしいと言うべきかマメというべきか私に対して積極的に好意を向けてきた。 普通に試合をしようという旨は勿論だが、リーグの選手のこと、今度の休みは暇なのか、イタリアに遊びに来いだのイギリスを案内してくれだの、果てにはストレートに君が好きだ…だの。 私は内心呆れながらも彼のそういう素直な部分が嫌いではなく、普段携帯なんて必要最低限しか使用しなかったのに気付けば受信ボックスに彼の名ばかりが連なるようになった。 そんな連絡攻撃の中で、久し振りのオフの日にフィディオがイギリスへ遊びに来た時、当然といったように彼に案内と称してデートに誘われた。 私は渋々といった体で付き合っていたのだが彼は終始とても楽しそうで、次第に抵抗するのに疲れるともういいかと自身も楽しむ事にした。 「ねぇ、エドガー。」 「どうかしたのか?」 「んー、あのさ、」 「…?何だ?」 「たぶんエドガーは信じてないんだろうけど、僕はエドガーが好きだよ」 「またそれか。」 彼のいつもの"好き"に私は慣れたように返したが、珍しく彼は引かなかった。 歩みを止めたかと思えばまっすぐに私を見つめるフィディオは、その大きな深青に真剣さを滲ませていたから、私も自ずと立ち止まり彼を見た。 「エドガー、君が信じてくれないのなら信じてくれるまで言うよ。僕は君が好きだ。」 その時から、彼の印象は急速に変わっていく事になる。 そう、 私の心に真っ直ぐに向けられた言葉と、 近付く彼の少しばかり緊張が見える表情、 そして握られた手の温もりに。 |