「一途な王子様」
俺にはずっと、大切な女の子がいた。
大きく見開かれた瞳から、ぼろぼろと涙が溢れる。でも俺は、それを拭わない。拭ってやれない。
「好きなんだ、」
この先も彼女が俺の事を見てくれないとしても。諦めきれない。諦めたくない。
「君だって分かるだろ、」
「……うん」
目の前の女の子は、泣きながらも笑う。俺を真っ直ぐに見たまま、俺の気持ちを受け入れようとしてくれている。その姿にひどく胸が痛んだ。ねえ、どうして俺だったの。だって俺は、君の事を女の子として一度も見てなかったのに。
1人の仲間として、マネージャーとして。
俺たちを支えてくれる、大切な仲間として。
これからも、そばにいて欲しかった。
俺の活躍を見ていて欲しかった。
ーー彼女の次に、大切に思ってたんだ。
どうしようもなく彼女が好きな自分に呆れる。
「いいの。そんな一哉にね、私恋してたから。」
心が握り潰される様なその耐え難い苦しさと痛みに、俺は我に返った。
もしかしたら彼女に告白された時。
彼は、こんな気持ちだったのかもしれないって。
気持ちが重ならない切なさではなく、
応えられない辛さの方が、ずっと痛いんだな。でもきっと痛みの種類が違うから、比べるのはおかしいのかな。君に、失礼だろうか。
嫌いな訳じゃないんだ。
ただ、俺が応えられないだけ。
「ごめん、なまえ」
「謝らないで。
本当に何処までも一途な王子様だね、一哉は。
そんなあなたに想われるお姫様が、ほんのちょっとだけ羨ましいな。」
俺を勇気づける様に強く笑う君を、
俺はこの時初めてーー
1人の女の子として、綺麗だと思った。
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