「あなたとお友達」







βちゃんは昔から何でも出来る子だった。
勉強もスポーツも何もかも。

「ねえ、一緒に遊びましょ」

「え?」

いつも後ろから見ている子だった。
羨ましい、……可愛いってただのクラスメイトの立ち位置から思っていた。

「β…さん?」

彼女に反して私は普通の子だった。
性格も身体能力も頭脳も普通。良くて普通の少し上。努力していなかった訳じゃない。
でも、いつも生まれつきの弱い体がそれを邪魔する。

だから、βちゃんはそんな私の事を見下してるって思ってた。だってある時知っちゃったんだもん。βちゃんの裏の顔。あんなに可愛い顔で誰かの悪口を言っている彼女を。

ーー私は引かなかった。彼女ほどの出来る子ならそう思って当然だろうって考えてたから。ある日の放課後、廊下で急に話しかけられた時、私はすごくビックリした。

「さん付けなんてやめて。
そうね、βちゃんって呼んで。
私もなまえちゃんって呼ぶから。」

「え、あの、」

「ふふ、なあに。その顔。
私があなたに話しかけた理由が分からないって顔ね?」

手を握られて、顔を近づけられて、そんな事を言われて。私の心臓は破裂寸前だった。だって、憧れの子が私を見て、私に言葉をかけてくれている。こんな事、夢じゃなく現実に起こるなんて思わなかった。

風で揺られた髪から甘い匂いがする。なんのシャンプー使ってるんだろう。睫毛長いな、可愛いな。ーー良いなあ。

「ただの気まぐれよ。
たまにもあなたみたいな子と遊んでみるのも楽しいかなって」

「そ、っか」

「あら、不満?」

「ううん、気まぐれで良かったなって。」

「ふふっ、うん。あなたなら少しは退屈しなさそう。じゃあ、これから宜しくね?
なまえちゃん」



可哀想で、可愛い。
私のそんなお友達。頑張ってるのに報われない。でも折れる事はない。
そんな健気なところが可愛くて、可愛くて。


「ーーあの、良かったらこれ使って」


友達になってあげる少し前。
精一杯の勇気で不安そうな顔で可愛い絆創膏を差し出してきたクラスメイトのあなた。
ありがとうって言ったら、へにゃって馬鹿みたいに嬉しそうに笑っちゃって。

そういう平凡な姿がね、私多分好きなの。
だから、お友達になってあげようかなって思ったんだけど。

「ううん、気まぐれで良かったなって。」

気まぐれで良かったって、何?
言い出したのは私だけど、もうちょっとショック受けて欲しかったな。そういうあなたの顔ずーーっと見たかったから。

まあ、でもそれはおいおいでいっか。

「ふふっ、うん。あなたなら少しは退屈しなさそう。じゃあ、これから宜しくね?」

それで、どんどん憧れの私に溺れちゃってね。その後にーーそれを裏切ってあげる。
それでも友達って言うなら、その時は本当にお友達になりましょうね。



 

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