「寄り添うおまじない」



「周りがなんて言おうと、ツナはツナ。
それでいいんだよ。私はそんなツナがいい」

それがあいつの口癖。失敗して落ち込んだりしてダメダメだった俺にいつもそう言ってくれた。俺にとってこれはまるでおまじないだった。もう少し頑張ろうって思える、当たり前で、

ーーー二度と聞けないおまじない。

この結末を考えられていなかった訳じゃない。だけど、大丈夫だろうって。なまえは俺の事情を全く知らないし、……そうなる様にリボーンに必死に頼み込んで、遠ざけてきたんだ。でも、積み重ねてきたその努力を世界は、あの男は呆気なく壊した。

ああ、違うな。きっと最初から脆かった。
遠ざけるなら、完全に姿を消すべきだった。
嫌われてでも突き放すべきだった。

「……おまじない、切れちゃったよ」

あの連中の手によって殺されたなまえの遺体は、一旦ボンゴレが預かる事になった。いや、俺にはご両親に渡す覚悟がなかった。だって、なんて処理すればいい?不審死?そんな嘘をつけるほど、俺は大人にはなれなくて。

それに、そうしたら、なまえが本当に死んだ事になる気がして。そんなの、嫌なんだ。
今だって信じたくないのに。

「また、あの言葉を言ってよ。
そうしたら俺も、今度はちゃんと言うから。」

本当はきっとずっと前から好きだったって、勇気を出して言ってみせるから。
俺の手で守り通してみせるから。



生を奪い取られている様な、本能的な恐怖に似た感覚が体と心を蝕む。擬似的な死だっていうのは心では分かっているのに、体はそう感じ取ってしまうらしい。意識が落ちる。
いつかは晴れる長い眠りにつく。

頑張ってくれ、昔の俺。
お前の望む未来のために、お前の大切な人達の為に。

お前はこの惨めな恋を無意味なものにしないでくれ。死んでも死に切れない後悔なんて、本当は知らなくていいんだ。

《どれだけ時間が経っても、ツナはツナなんだね。》

「………え?」

意識が完全に落ちる寸前、そんな声が聞こえた。都合のいい幻聴だったのかもしれない。

《なら、きっと大丈夫だよ》

でも、俺はそのおまじないを信じた。
安心感から生まれた薄い眠りにそのまま身を任せる。次に目を覚ましたら、まず。


君が好きな花を両手一杯になるくらい買って、君の墓に添えよう。






 

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