秋原奈月のゲーム好きは、一部の男子の間では有名な話だった。 1年の頃から、橘六花と昼休みの度にゲームのストーリーについて語り合う。それをオタク談義と一部の女子からは嫌厭され、孤立していたのだった。 「へぇ、そんな子がいるんだな」 「もう一人の子とクラスが離れたみたいで、最近はいつも一人でいる」 「研磨みたいだな」 「・・・」 「要はその子と仲良くなりたいってことだろ?」 「部活にも入ってないみたいだから」 「なるほど、マネージャーゲットのチャンスになるかもってことか」 *** いざ目の前でその会話が繰り広げられているのを見ると、不思議な感覚になる。 どのゲームの話をしているかは、プレイ済みの研磨にはすぐわかった。 「それってもしかして、TOZの話?」 「えっ、孤爪くん知ってるの?」 驚いた顔をこちらに向ける二人。 隣でクロがニヤニヤしながら補足する。 「こいつ、かなりのゲーマーなんだよ」 「そうなんだ!なっちゃんと一緒だね!」 「もしかして、まだプレイ途中でネタバレだったとか・・・」 「ううん、それはもうクリアしたから平気」 「よかった」 「しかし何でまたゲームの話?」 「私、物語が大好きで、ゲームのシナリオなんかも大好物なんですけど、いかんせんゲームが苦手でして」 「りっちゃん部活や生徒会で忙しいのもあって、なかなかゲームできないんです」 「だからゲーム得意ななっちゃんにプレイしてもらって、そのストーリーを教えてもらってるんですよー」 「私もRPGはすごく好きだから」 そう言う彼女たちは、とても楽しそうだった。 「ところで孤爪くんだっけ?はどういうゲームが好きなの?」 「おれは、モンハンとか・・・」 「あっ、最新作私も持ってるよ。でもあんまり上手くないから緊急で引っかかってるんだけどね」 「一緒にやる?二人なら多分できるよ」 「いいの?」 「なっちゃんにゲーム友達が・・・よかった・・・!」 「俺としても、あの研磨に女子の友達とか、感激して泣きそうだわ」 「ありがとう、孤爪くん」 「研磨でいいよ。おれもなっちゃんって呼んでいい?」 「うん、よろしくね研磨くん」 ふんわりとした柔らかい笑顔を向けられる。 よかった、やっぱりいい子だ。 |