勢いで連れてきてしまった。
校舎裏、夏と言えども夜はそれなりに涼しい。
人気のない場所まで来て、俺は何をしようってんだ。

「黒尾先輩・・・怒ってます?」

立ち止まり、無言のまま大人しく手を引かれている奈月のほうに向き直る。
おどおどと視線を揺らしている彼女。
Tシャツとはいえ、寝巻きであろうそれは首元から鎖骨が見え隠れしている。
半パンから覗く太もも、まだ若干水気を含んだ髪。
お風呂上がりの石鹸の香りがほのかに感じられる。

「奈月、そんな格好あいつらに見せんなよ」
「えっ」

その言葉に一気に頬を紅潮させる彼女。着ていた上着をかけてやった。

「それ着とけ。あの部屋は男ばっかりだから、風呂のあとは来ないようにしてくれませんかね?」
「あ、はい・・・」
「彼女のパジャマ姿見れるのは彼氏だけの特権だからな」
「彼女・・・」
「ん?」

まっすぐ見つめられた大きな瞳から、涙が一粒溢れて落ちた。

「ど、どうした?!怪我でもしたか?」
「私は、黒尾先輩の彼女なんですか?」
「は?当たり前だろ何言って、」

その瞬間、ポロポロと涙が溢れ出す。
本格的に泣き始めてしまった彼女を、とっさに胸の中に押し込めた。
背中に手が回る。そっと頭を撫でてあげれば、しゃくりあげながら話してくれた。

「付き合うって、言わなかった、から、恋人で、いいのか・・・」
「・・・悪い、はっきり言わなかった俺のせいだわ」
「ちが、私が・・・」
「奈月、聞いてくれ」

立てた人差し指を彼女の口元に当てれば、頬を染めてこくりと小さく頷いた。
涙を親指で拭い、正面から彼女と見つめ合う。

「俺の彼女になってくれませんか?」
「はい・・・!」

真っ赤になりながらもにっこりと微笑む彼女を、もう一度強く抱きしめた。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -