試合終了を告げる、ホイッスルが響き渡った。
それは、全国への道を閉ざした残酷な音だった。



ベスト8。
それが音駒高校バレー部のインターハイでの結果。
誰一人それに納得なんてしてはいない。
学校への帰り道は、それはそれは重苦しい空気に包まれていた。


体育館でのミーティング。
猫又監督の声が半分も耳に入ってこない。

「それじゃあ今日は解散」

黒尾先輩の静かな声に全員が立ち上がる。


皆がゆっくりと部室へと向かう中、足が動かないままの私。
そんな私に先輩は向かってきて、頭をそっと撫でてくれた。

「悪い、全国連れてってやれなかった」


静かにそれだけ言って踵を返した先輩のユニフォームの裾をぎゅっと掴んだ。
先輩の足が止まる。
その背中に向かってそっと呟いた。

「・・・辞めないでください」

必死で絞り出した声。嗚咽交じりの、掠れた声。


「もっと先輩と一緒にいたいです・・・先輩のバレーを見ていたいです!」

気持ちが、止まらない。


「黒尾先輩が、好きです」



時が止まった気がした。



先輩はゆっくりと振り返る。
次の瞬間には目の前が真っ暗になった。
背中に回った先輩の手が私のジャージを握り締めたことで、ようやく抱き締められたのだと理解した。

何も言わずにただ、時間が過ぎてゆく。
先輩の胸の中で静かに涙を流す。そんな私をただ黙って抱き締めてくれた。


「俺も好きだ、奈月」


抱き締める力が一層強まった。





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