清々しい朝の玄関入り口。たくさんの生徒が登校してきている。下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声をかけられた。 「秋原さんおはよう」 「あ、孤爪くんおはよう。昨日はありがとう。お礼にこれ・・・」 「別によかったのに」 板ガムを差し出す。何を買うか迷った結果が無難なガムだ。言葉では遠慮しつつも受け取ってくれた。良かった。 昼食タイム。 今日もりっちゃんは来れないらしい。それならと、お弁当の入った小さなバッグを持って、昼休みに入るや否や、そそくさと教室を後にする。 行き先は・・・まぁ、適当に。 *** 午前中最後の授業が終わると、さっと立ち上がり小さな鞄を持って出て行ってしまった秋原さん。他の人はそんなこと気にも留めていない。 しばらくするとクロが来る。 「あれ、研磨、奈月ちゃんは?」 「・・・どっか出て行った」 「はぁ?なんで引き止めといてくれねーんだよーもー」 そう言うとおれの手を引いて外へ連れ出すクロ。 ふと昨日の言葉が思い起こされる。 『先輩には言わないでくれる?』 おれが割って入ったときには、既に暴言を浴びているだけだった彼女。 きっとクロのことが気になる女子たちに絡まれてしまったということだろう。まあよくあることだ。 若干申し訳ない気持ちになるも、元はといえばクロが悪い。 クロは一直線に屋上へと向かう。 |