「おはよう研磨くん」
「なっちゃんおはよう。熱大丈夫?」
「うん、大したことなかった。心配かけてごめんね」
「ならよかった」

靴箱を開けて上履きを取り出す。ふと感じる違和感。
ひっくり返すと落ちてくる、錆びついた釘。
その光景に、奈月も研磨も凍りつくのだった。

「さすがにそれは・・・」
「・・・まぁ、実害もないし大丈夫だよ」

釘を拾って、上履きを履いた。



昼休み、私の宣言を聞いたせいか積極的に私と黒尾先輩を近づけようとするりっちゃん。
りっちゃんには彼女たちのことは伝えていない。
気持ちは嬉しいのだが、素直に喜べないでいた。

「そういえば、黒尾先輩っていつの間にかなっちゃんのこと呼び捨てにしてますよね」
「えっ」
「そうだな」

そう言われてみれば、確かに。今まで意識してはなかったけど・・・

「まぁ、俺と奈月の仲だしな?」

そうニヤリとされれば顔が一気に紅潮する。
いつもなら、何を言ってるんですかーなんてかわすものが、自分の気持ちに気づいてしまったとなれば話は別。
真っ赤になって何も言えないでいるのを、3人がやや驚いて見ていることに気がつく余裕もなかった。




「昨日はお騒がせしてすみませんでした!」

部活の始めに、部員全員の前で頭を下げる。
海さんがにこにこと声をかけてくれる。

「体調はもう大丈夫?」
「はい、ばっちりです!」
「そっか、じゃあこれを」

紙袋から何かを取り出す海さん。
頭に疑問符がついたままの私にそれを手渡した。黒尾先輩が口を挟む。

「お、やっと届いたのか」

それは見慣れた赤色の音駒高校バレー部のジャージだった。
すぐにビニールを破いて、新品のそれに袖を通す。
音駒バレー部の一員となった姿を、黒尾先輩にしっかりと見せつけた。

「先輩!どうですか似合います?」
「おう、バッチリ!」

満面の笑顔の二人を研磨は優しく見守っていた。





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