「さっき黒尾、奈月!って名前呼び捨てにしてたよな」

夜久がぼそりと呟く。研磨は目をそらしながら答える。

「とっさに慌てたんじゃない」
「まあ、そうかもしれないけど」
「俺だって奈月さんと仲良くしたいっす!」
「リエーフが勝手に呼び捨てにしたらクロが怒る・・・多分」

「ほら、秋原さんのことは心配だけど、僕たちは練習するよ」
「「はい」」



体育館の扉が開く。みんながそちらを注目する。
入ってきたのは黒尾1人。

「研磨、奈月の鞄どこ?」
「部室。なっちゃんどうなの」
「微熱だったけど、今日はもう帰ることになった。ちょっと送ってくるわ」

それだけ言ってまたすぐに体育館を出て行った。

「・・・ってことは奈月さんの家知ってるんすか!?」
「別にクロだけじゃない、おれも知ってる」
「研磨さんも!?ずるいっす!!」
「リエーフうるさい」

「また呼び捨てにしてたよな、あいつ・・・」

夜久はひとり、波乱の予感を察知していたのだった。





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