合宿初日。 東北に向かう新幹線に乗る。 「ほら、奈月ちゃんそこ奥」 「はい」 「おれ窓側がいい・・・」 「あ、研磨くん変わる?」 「うん、ありがとう」 「俺は通路側がいいから、奈月ちゃん真ん中な」 「あ、はい」 みんななんだかそわそわしている気がする。 そういう私も、研磨くんと先輩にこんな近くで挟まれて、何となく緊張するのだった。 「なんだか緊張するね」 「そう?あまり気負わないほうがいいよ」 「うん、頑張る」 「・・・やる?」 研磨くんが取り出してみせたPSP。 やる!と元気に返事して、二人で通信プレイ。 「なっちゃんそっち行った」 「うん・・・なんとか・・・尻尾切れた!」 「ここに罠敷いたから連れてきて」 「うん、麻酔お願い」 「分かった」 「楽しそうだな、お前ら」 新幹線はあっという間だった。 1日目の相手校に到着。 初めて見るバレーの試合。 練習試合と言えども、どちらも当然本気でかかってくる。 相手の攻撃をひたすら拾って繋ぐ。 『俺達は血液だ』 試合前の黒尾先輩の鼓舞が耳に残っている。 スコアボードをめくりながら、ひたすらボールの動きを目で追う。なかなか落ちない。 繋いでいれば負けはしない。猫又監督の声が頭の中でこだまする。 試合終了のホイッスル。音駒高校の勝利だ。 「お疲れ様です!これどうぞ」 ドリンクをみんなに次々手渡す。 「あざます!」 「ありがとう」 「黒尾先輩も、どうぞ」 「ん、サンキュ。どうだった?試合見て」 「皆さんすごく流れるように連携してて・・・すごくかっこよかったです!」 「だろ?」 チームみんなが笑顔になる。 奈月のその声もまた、メンバーにとっての鼓舞となるのだった。 |