「今日からマネージャーとしてやってもらうことになった」
「2年3組の秋原奈月です!バレーボールは全くの初心者ですが、お役に立てるように頑張りたいと思うのでよろしくお願いします」

頭を下げる。周りから拍手が湧き上がった。
「ついに俺たちのチームに女子マネが・・・!」なんて泣いてる人までいる。あまりの歓迎ぶりに、ちょっと面食らうのだった。

「んじゃあお前らいつものメニューな、俺は奈月ちゃんに部室とか教えてくるわ」
「「はい!」」


扉を開けた先輩に続いて中に入る。

「部室はここな」
「はい、なんかすみません練習時間奪っちゃって」
「気にすんな。分からないことあったら何でも聞けよ」
「あ、ありがとうございます」

あんなこと言ったけども、事前知識ゼロの私にマネージャーなんて本当に務まるのだろうか。

「浮かない顔だな」
「えっ、そんなことないですよ」

笑顔を作る。それを不思議そうに眺める先輩。
なんだか見透かされている気分に陥った。

「何も知らない私に出来るのかな、とか思ってんだろ」
「えっ、いや、えっと・・・はい」
「正直でよろしい。大丈夫大丈夫、高校からバレー始めたって奴もいるしな。すぐ慣れる」
「はい・・・」
「まだ不安か?」
「いえ、あの・・・やけに今日は優しいですね、先輩」
「俺が優しいのはいつものことだろ?」
「えぇー・・・」

良かった、なんとかなりそうだ。
と安心したところにさらりと告げられる大問題。

「ゴールデンウィークは遠征だからな」
「遠征?」
「そ。宮城まで泊りがけで合宿。ちょっとスマホ貸してみ」

宮城?遠征?泊まりがけ・・・?
混乱しながらスマホを取り出すと、先輩がそれを取って何やら操作している。
ただただ混乱する私は、それをじっと見つめるだけ。

「これでよし、俺のアドレスと番号入れておいたから、あとで連絡してな」

頭にぽんと大きな手が乗り、先輩は部室から出て行った。
残された私はひとりで一層混乱するのだった。

アドレス?先輩の?

手元のスマホには確かに、黒尾鉄朗の名前が載っているのだった。





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