「みゃあ」 何かと辺りを見回せば、小さな木の影に一匹の黒い子猫。 気にしないことにして立ち上がり、街の外へと向かう。 街の出口まで来ると足を止め、振り返る。 小さな黒猫は小さな彼女を見上げる。 「危ないから、来ないで」 そう言うと踵を返し街の外に出る。 振り返らずに目的地まで歩いていく。 小さな気配と、小さな足音。 枯れ葉を踏む音が確かに聞こえている。 「お前はひとりなの?」 「みゃあ」 「そう・・・私とおなじね」 元々ここにはちょっとした依頼であるベリー収集を頼まれたので来たのだ。 木を揺らし、実を落として集める。 猫は落ちてきた実に興味を示した。 追い払うことは諦めて、これは食べちゃダメと言えばしっかり見るだけで待っている。 「次はあっち」 歩き始めると、急いで追いかけて足並みを揃え、隣を歩く小さいヤツ。 満更でもない、と感じ始めたその時。 「待って」 目付きがいつにも増して鋭くなる。 猫は警戒し、2歩ほど後ろに下がる。 「隠れて」 ごくごく小さな声でつぶやく。 猫はちゃんと茂みに隠れたようだ。 姿を現したのはモンスター。 いつもなら躊躇なく範囲攻撃で一掃出来るけれど、アイツを守るとなれば話は別。 クナイを投げて怯んだ敵に、2本の短刀で切り裂いた。 力なく崩れた敵、茂みから寄ってくる猫。 「もう大丈夫」 「みゃあ」 よかった、ちゃんと守ることが出来た。 「おいで、行こう」 「みゃあ」 速度をあわせて、ゆっくりと歩き出した。 |