・・・・・・あ、 暑い夏の港町、活気に溢れたナルビクの昼。 10メートルほどの距離、小さな街灯に背中を預けて立っていた。 立ち止まるボリスを気にもせず人混みは流れていく。 顔を若干隠してはいるが、間違えるはずもないあの雰囲気。 視線が重なる。しかしお互いに言葉をかけることはない。 元気にしているようだな、ランジエ。 お前もだ、ボリス。 それだけの言葉を目で交わすと、ゆっくりとまた歩き出した。 背中に彼の視線が感じられる。 きっと彼も今同じことを思っているのだろう。 振り向きたい気持ちを抑え、ゆっくりと歩いていく。 つもる話などあっても必要ない。お互いが今を生きているという事実さえあれば。 元気でいてくれ。 心からの想いは伝わっただろうか。 ボリスもまた、彼の存在に力付けられた。 それは彼も同じはず。 視線がそう語っていた。 ボリスは足をアクシピターに運ぶ。 中に入ると見慣れた顔が待っていた。 「やぁルシアン。今日の任務は?」 |