思い返してみても、彼女との出会いは微笑ましいものではなかった。



ある日のウルダハにて。見目麗しい女性を二人も連れて、サンクレッドは歩いていた。

「サンクレッド様ぁ、今度お食事でも行きましょうよ〜」
「おやおや、こんな美しいレディからのお誘いとあらば断れないな。ただし、代わりにと言ってはなんだが、ひとつ質問に答えてくれるかい?」

最近ここに来たという冒険者について。
女性に他の女性のことを聞くなどタチが悪いと思うだろうが、こういうことをしっかり見ているのは大概女性なのだ。こういう場面で男は本当に役立たない。

「あ、その人なら知ってますよぉ、最近町のお悩み解決しまくってるとか〜。どちらかというと何でも屋?この間コロセウムでポスター貼りしてるの見ました〜」
「あぁ、その娘ならわたくしも見かけましたわ。わたくしってば丁度その目の前でお財布を落としてしまったのですけれど、ちゃんと全部拾ってくれましたのよ。無口でしたけれど、懐に入れたりはしなかったので真面目な娘なのだと思いますわ」
「なるほど」


「それじゃサンクレッド様、また次回」
「あぁ、次に会えるのが待ち遠しいよ」
「もう、調子がいいんですから」

二人が去っていくのをじっと見ていた。
すると、背後からゆっくりとこちらに近づく足音。

「私のことが気になるなら直接本人に聞けばいいのに」

ゆっくりと振り返る。話題の冒険者が呆れた表情でこちらを見ていた。

「おやおや、これは一本取られたな。でも君みたいに素敵な女性になら俺は・・・」
「私にまでそれ、するの?」

遮られたそのセリフを聞いて、へぇと思わず声がこぼれた。

「なるほど、超える力で俺のことを見た、とか?」
「超える力?」
「君はふと、ここではないどこかの情景を見てしまったことがあるんじゃないか?それは俺たちが超える力と呼んでいる能力のひとつだ」
「・・・つまりあれは、実際に起こった出来事だったということ?」

曖昧に微笑みを返す。対する彼女は相変わらず眉根を寄せたままだ。

「一緒に来ないか?俺たちは君の力を借りたい。君は君の力について知ることができるだろう」
「取引ってこと?うーん・・・もし断ったらどうする?」
「それは困るな・・・そうなったら無理矢理にでも御同行頂こうか」
「そんな気ひとつもないくせに」
「おや、そうかな?」
「女性に優しくが信条なんでしょう?」
「敵対するならそればかりではないぜ?」
「そうなの?貴方の目には全く敵意が見えないんだけどなぁ」
「サンクレッドだ」
「そう」
「君は?」
「そうだねぇ・・・」

彼女はニヤリとこちらを見て言った。

「連れて行ってくれたら教えてあげる」
「フッ、了解だ」




「サンクレッドー!」

聞き馴染みのある声で覚醒すれば、どうやら転寝していたらしい。

「なんだかすっごいイイ笑顔で寝てたけどー?」
「あぁ、誰かが起こしにかからなければもっと長くイイ夢が見れてたんだがな」
「もーどうせ女の子たっぷりはべらせてた夢でしょ?いいよーラミンさんに愚痴ってくるから!」
「はは、悪かったって」
「あーっ、否定しないってことは本当にそうなんだ!?」
「さあ、どうだろうな」

それが君の夢だったってことは教えてあげない。



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