目を開けるとよく見知った庭に立っていたことに、安堵の溜息が漏れる。太陽が辺りを赤く染めているが、朝焼けなのか夕焼けなのかは判断がつかない。
ビルに一報を入れると、あれから20日ほどたったあとの夕方であることを教えてくれた。


「それじゃあ私は帰りますね、お疲れ様でした。また明日そのお菓子食べに来ます〜」

そう言ってテレポを詠唱し、消えていく彼女に小さく手を振って見送った。


椅子ではなくソファに座り、背もたれに体を預ける。
20日。たったあれだけの時間が20日になってしまった。
実感はまだないが、その現実味のなさが余計に恐ろしい。
そっと隣に腰掛けてくる彼にとっては、これから1ヶ月の長期休暇を得たのと同義だ。
混乱する脳を解放しようと、マルクト製のクッキーをひとつ口に運んだ。

「お疲れ様でした、メリー」
「あなたもね」
「・・・すみませんでした」

いきなりの謝罪に少し驚いて彼を見る。珍しく困り顔のジェイドがそこにいた。

「自分の責任なのに、貴女にばかり負担を強いてしまいました」
「あの時できる最善だったのでしょう?」
「えぇ。ですからこの選択を後悔している訳ではありません。しかし私には何も出来なかったのも事実です」
「私だって後悔なんかこれっぽっちもないわよ。回復魔法を使うだけであれほど感謝されて人の為になることなんてそうそうないんだから。20日っていうのはさすがにまだ実感湧かないけれど・・・」
「私が言うのも何ですが、疲れたでしょう。今日はもう休みなさい」
「そうね。寝付けるかは心配だけど」
「添い寝して差し上げましょう?」
「・・・お願いしようかしら」
「おや、そうきましたか」

少し恥ずかしくなって横目で見れば、柔らかく微笑む彼と目が合った。




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